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IoTデータの利活用による これからのリテールデータマーケティング セミナーレポート


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2019年7月24日、「IoTデータの利活用による これからのリテールデータマーケティング」セミナーを開催しました。リテール業界ではデジタル化が加速し、オムニチャネルを通じて、顧客にデジタルとリアルが交差するような包括的な体験を提供することが求められてきています。デジタルマーケティングの先にある、課題や最新の取り組みについて紹介しました。

IoTはマーケティングをどう変えるのか

株式会社ウフル 執行役員 X United 事業本部長 坂本尚也

近年「Society 5.0」、「Digital Twin」、「CPS(Cyber Physical System)」、「OMO(Online Merges with Offline)」などが話題になっています。共通していることは、オンラインとオフラインの融合です。

株式会社ウフル 執行役員 X United 事業本部長 坂本尚也

先駆的なデータ活用として、コマツの取り組みがあります。建機にセンサーをつけるところから発展し、最近では建設現場をドローンなどで3D計測し、デジタル空間にコピーを作ります。そこで遠隔操作しながらシミュレーションをし、それをデジタル空間からリアル空間に反映していきます。

リアル(物理)とデジタルのレイヤーは分かれますが、それらをいかに融合し活用していくかが課題です。そのために不可欠なのが各種センサーです。スマートフォンには加速度センサー、指紋センサーなど多種多様なセンサーが搭載されています。ほかには、位置情報が分かるビーコンや、最近では「スマートピル」として、薬にセンサーがついていて、経口投与した時に体内のどこを通ったかまでセンシングできるようになっているものもあります。

代表的なセンサーとしては、主に機器、映像、位置、音があります。例えばスポーツ会場で音圧やトーンで会場の熱狂度を測ったり、機器と映像を組み合わせて、トイレや売店の混雑具合を可視化できたりします。最新のカメラでは1億画素が登場し、これを使えば数万人規模の顔認識や表情分析が可能となるでしょう。スマホの位置情報からは生活商圏や行動パターンなどが把握できるようになってきています。

坂本は「空間を立体的にデジタル化していくことにより、オンラインでは平面だった世界がより立体的になり、より精確なペルソナが再現できるようになってきています」と言います。

センサーの増加によりデータが爆発的に増えています。世界のデータ量は2016年の16兆GBから、2025年には163兆GB、9年で約10倍という予測もあります。取得できるデータが増えると、データ流通の仕組みも必要になります。日本でも国が率先してデータ流通の仕組みを作っていこうとしており、ブロックチェーンにより、分散させつつ信頼性も担保して、データ流通が進んで行くと考えられます。

収集したデータが増えると、予測や分類の精度が上がり、AIで活用される場面が増えてきて、結果的に最適化に繋がってきます。データを活用すれば、店舗に来た顧客が5秒後どのような行動をするのか、というところまで予測することが可能になるのです。

例えば、サンフランシスコの新形態のリテールストア「b8ta」では、最新商品を展示し、店内に設置された各種センサーが、来店客の足取りや目線の動きをデータ化し、商品の販売元に提供しています。動線分析などから顧客理解を深め、企業のマーケティングに役立てる狙いがあります。ほかにもデータの活用事例として、顧客が受け取った価値に対して対価を払う、価格最適化につなげる仕組みも紹介しました。

データ活用においては、「センサーやカメラの設置(測定環境の準備)」、「全体の測定設計(カスタマージャーニーの設計)」、「データの集約(相関性分析)」、これらをひとつのチームとして展開することで、実践的に発展が見込めます。「カスタマージャーニーが精緻化していく中で、顧客体験を上げるため、どう人に還元していくのか、リアルタイムにどのような施策を打つか、が重要である」と締めくくりました。

リアルデータとデジタルデータの統合と施策の変革

トレジャーデータ株式会社 パートナーサクセス 宮前賢一 氏

トレジャーデータは2011年設立、データ分析サービス、特にカスタマーデータプラットフォーム(CDP)を提供しています。2018年にソフトバンク傘下のArmに買収されたことで、IoTなどリアルなデータを取り込む基盤が強化されました。現在では企業内でバラバラになっていたデータを繋げる、O2O、マーケティング精緻化、データのマネタイズといった領域でビジネスを展開しています。

トレジャーデータ株式会社 パートナーサクセス 宮前賢一 氏

データ活用の阻害要因としてよく挙げられるのは「データのサイロ化」です。ECの閲覧や売上データ、マーケティングのSNSデータ、店舗の売上データ、営業の顧客データなどそれぞれが孤立して連携されておらず、データ活用に至らないという状況です。

トレジャーデータが提供するCDPは、リアルとバーチャルのデータを一元的に統合しています。売上など企業システムが持つデータと天気など社外にあるデータを統合することで、より精度の高い分析ができ、メール配信やレコメンドといった各種施策につなげるというものです。

CDPの管理画面では、様々な足跡から顧客を把握できます。例えば自社のWebサイトのどの商品を閲覧したのか、自社オウンドメディアのどの記事を閲覧したのか、検索サイトでは何を検索したのか、実店舗では何を購入したのか、購入した時間帯はどんな天気や気温だったかなど。こうしたデータを統合することで、顧客の行動や関心事などが浮かび上がってきます。

様々な足跡から顧客一人一人を把握

現在、日本国内350社を越える企業様がトレジャーデータの製品を活用しています。Datanyzeによると、国内CDPマーケットシェアではトレジャーデータが92.3%で圧倒的な強さを誇っています。またThe Marketing Technology AwardsではBest Customer Data Platform 2019を受賞しました。

ここからは事例を2件紹介します。最初はSUBARUです。ここでもデータのサイロ化が起きていました。広告や販促のデータ、自社製品サイトの履歴、ディーラーのデータ、事後のCRMデータなど、部門や会社の壁がデータ活用を阻んでいました。

ここにトレジャーデータのCDPを導入し、各種データを統合することで、顧客が実際にハイブリッドカーのフォレスターを購入し、納車されるまでのカスタマージャーニーを追うことができました。ある顧客は3月にレボーグの見積もりを取り、数日後にフォレスターの最新情報記事を閲覧、以降はフォレスターのカタログを請求するなど関心が移ったことが推測できます。さらに後日、オンライン見積もり、ニュースサイトでレース情報記事を閲覧、子会社STIサイトでパーツ閲覧を経て、来店して見積もり、数日後に成約となりました。さらに成約後も納車までオプションページを大量に閲覧していることも分かりました。

こうした成約実績のある顧客データを機械学習させたところ、見込み客スコアリング精度が飛躍的に向上しました。どのサイトを何回以上閲覧した顧客は成約に繋がりやすいなどを把握することで、セールスマンは購入可能性が高い顧客へ効率的に営業ができます。結果として、SUBARUでは「成約率が倍増した」とのことです。

次は消費財メーカーです。ここでもWebサイトやアプリ、店舗のデータなどが別々で結合ができていませんでした。年間10億件、1日あたり200万件以上の生データを高速処理し、トレジャーデータのCDPで統合した結果、顧客に応じたクラウド型マネージドサービスを1ヶ月で構築し、最適なクーポンやポイントが提供できるようになりました。

宮前氏は顧客体験の一例を紹介しました。ある顧客は来店前にサイトやアプリで、帽子とカットソーとパンツを検索したとします。来店して帽子を購入すると、カットソーのクーポンを配信したり、帰宅後にアプリでパンツをレコメンド表示したりします。こうしたカスタマーエクスペリアンスを構築することで、来店や購買回数の向上につなげることができたのです。

宮前氏は「これらの購買予測から必要な在庫数、更に製造計画にもつなげていくことができます」と締めくくりました。

スポーツメーカーの顧客接点づくりを支える基盤づくり

デサントジャパン株式会社 第3部門 デジタルビジネス部 デジタルビジネス推進課 湊俊太 氏
株式会社デサント グローバルデジタルビジネス戦略室 デジタルビジネスプラットフォーム課 勝山厚志 氏

デサントは創業1935年(昭和10年)。「すべての人々に、スポーツを遊ぶ楽しさを」を企業理念に、デサント以外にも水泳の「アリーナ」やゴルフの「マンシングウェア」など、数多くのブランドを運営しています。2010年にバンクーバーで開催された冬のスポーツイベントでは日本選手団に看板商品となる水沢ダウンを提供しました。現状では販売チャネルの8割が卸売りですが、今後は直営店やECサイトでの販売を伸ばすため、デサントならではの顧客体験と基盤作りに取り組んでいます。

デサントジャパン株式会社 第3部門 デジタルビジネス部 デジタルビジネス推進課 湊俊太 氏、株式会社デサント グローバルデジタルビジネス戦略室 デジタルビジネスプラットフォーム課 勝山厚志 氏

デサントの顧客とのタッチポイントは、実店舗やECサイトのほか、WebやSNS、さらにオフラインのスポーツイベントもあるのが特徴です。顧客体験の中心にしたいと、開発中なのがアプリです。イベントでノベルティ配布を通じてアプリのインストールを促進し、ニュースやイベント告知を配信し、閲覧したコンテンツやニュースの開封率などから顧客の興味を解析し、“個客”の興味に応じた最適なコミュニケーションを実現します。

顧客との関係構築を主眼としたCRM活動

オムニチャンネル化による売り方改革も進めています。通常、店舗では会計時にポイントカードなどを通じ、初めて顧客が誰かを知ることになります。しかし、来店時のチェックインにより顧客を理解することで、よりニーズに合った接客をしたいと思っています。また、ジオコードで店舗近くにいる顧客へクーポンを配信したり、商品のそばにあるQRコードから、コーディネイトを紹介する仕組みも検討しています。将来的には在庫管理システムを統一することで、店舗から瞬時に在庫の有無を把握し、シームレスに顧客の自宅に直送できるような仕組みも整えていきます。

在庫管理システムについて

 

オフラインデータを利用した店舗のデジタルマーケティング

株式会社ウフル マーケティングイノベーション部 古田進乃輔

ウフルの事業領域はクラウドサービスの導入、デジタルマーケティング全般の支援からIoTコンサルティングまで幅広く手がけています。今回登壇する古田はソフトウェアプログラマー出身で、アパレルやクレジットカードのMA(Marketing Automation)導入やプロジェクトマネージャ経験を積んでおり、「ウフル MCラボ」に記事を多数寄稿しています。

古田が所属するのはデジタルマーケティング全般の支援を行うマーケティングイノベーション部。次世代マーケティングのプランニングから施策の実施や改善まで、MAを中心に、年間20社50案件以上を一気通貫に支援しています。

株式会社ウフル マーケティングイノベーション部 古田進乃輔

ECと実店舗の違いをあらためてみてみましょう。ECではどのような検索ワードからたどり着いたか、どのような商品を閲覧したのかなど、購買前のデータがそろっています。ただしECと実店舗の両方がある場合、一般的にはECの売上はどれほど高くても2割程度となるのが実情です。対して実店舗では売り上げは多くても、取得できるデータは限られています。もし店舗でもEC同様に行動履歴データが取得できれば、潜在顧客が顕在化し、オムニチャネルなアプローチも可能となり、売り上げアップが期待できるのです。

将来の小売について想像を巡らせてみましょう。2002年に公開された映画に「マイノリティレポート」があります。公開当時は多くの人が「未来だ」と驚かされましたが、今見ると少しずつ実現できています。例えば主人公がアパレル店舗に入店すると、まずは虹彩から顧客が誰か把握され、バーチャル販売員が「こんにちは、○○さん。先日お買い上げくださったタンクトップはいかがでしたか?それに合うパンツがありますよ」と話しかけてくるシーン。

同様に、2014年に発行された「New Rules of Retail」という書籍では、将来の小売の姿としてジョンの一日が紹介されていました。スマホからラテを注文して店舗で受け取り、移動中に近くの店舗からクーポン通知があったので立ち寄る。店舗には体型をスキャンする専用ブースがあり、体型に合う衣類がレコメンドされる……という具合です。

店舗のデジタル化に向けた仕組みについて、古田は幸運な偶然という意味の「セレンディピティ」というキーワードを挙げました。「顧客が店舗に来店したとき「これ、ちょうどほしかったのよね」と、さりげなく偶然な出会いにみせることが良い顧客体験につながります。

実際に必要になる技術的要素を挙げると、来店検知、顧客の行動データ蓄積、パーソナライズレコメンド、販売員への来店顧客の会員情報通知などがあります。例えば会員顧客が来店すると販売員に通知され、顧客の購買履歴やそれに基づくレコメンドが表示されたり、会員顧客がデジタルサイネージに近づくと、過去に検索した商品を含んだコーディネートが表示されたりします。

システムは、データ分析基盤にトレジャーデータのCDPを活用し、広告DMPやIoTログも含め、オールインワンで提供しています。

システム構成図

導入にあたっては、活用イメージに合わせ、「接客向上パック」、「レコメンドパック」、「フルメニュー」の3プランを用意しており、要件ヒアリングからおおよそ4ヶ月程度でリリース可能です。

また、導入の際に重要となるのが、データ活用のパーミッションと販売員トレーニングです。顧客から、適切なタイミングでデータ活用のパーミッションを取ったり、販売員が接客時に適切に個人情報を取り扱えるよう、トレーニングをしたりする必要があります。

古田は、「まずはレンタルスペースなどでデモを体験し、次に実店舗で実証実験をしてから本格導入に進むことで、導入効果を実感していただけることと思います。」と締めくくりました。

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