IoTパートナーコミュニティフォーラム Season-8 レポート #02

2020年6月16日、「IoTパートナーコミュニティフォーラム Season-8」が開催されました。
第2弾となる今回のレポートでは、7つのワーキンググループのうち2つの発表と、IoTNEWS小泉耕二氏を招いてのパネルディスカッションについてレポートします。

第1弾のレポートもあわせて御覧ください。

ワーキンググループ活動成果発表

ヘルスケアワーキンググループ

サトーヘルスケア株式会社 友澤洋史氏

ヘルスケアワーキンググループは、前回Season7の成果発表を最後にクローズしました。そのため、Season8の成果発表ではこれまでの取り組み事例の振り返りが行われました。

2018年、手術室のモノの可視化について、ラフスケッチを書いて取り組みを実施。2018年1月には、名大病院とサトーホールディングスとの関係性が深まり、名大病院のスマートホスピタル構想にサトーヘルスケアが参画しました。取り組んだのは、IoTを利用したヒト・モノの追跡と解析です。2018年3月には高精度位置測位ソリューションの導入を開始。同年7月には名大病院プロジェクトがキックオフ。サトーヘルスケアだけでは難しいとし、ワーキンググループの一環として開始されました。

取り組んだのは、非効率な運営が課題となっていた手術室の課題解決です。メンバーで意見を出し合い、モノや機器の見える化を第一に進めることに決定。RFIDに着目し、ゴミ箱に搭載しました。タグ付きの箱をゴミ箱に捨てるだけで、何を捨てたのかが識別される仕組みです。RFIDゴミ箱により、看護師の業務負担を軽減することが可能となりました。

2019年には、GWに行われた日本医学会総会 中部にスマートホスピタルのブースを展開。7月の展示会では、展示ブース内にステージを作り、パートナーコミュニティ企業が登壇。大いに盛り上がりました。同年12月のIoTパートナーコミュニティフォーラム2019では、IoTゴミ箱について発表。なお、今後はシステムとしての実証を進めていく予定です。

2年間のワーキンググループでの活動で培った関係性を継続し、今後も名大病院の目指す新しい病院像実現の手伝いをしたいと考えています。本来の看護である「患者さんに触れる=手当」に看護師が時間を割ける状況を作ることが、スマートホスピタル発展により実現できるでしょう。

セキュリティワーキンググループ

全シーズンの活動を通して

株式会社アットマークテクノ 實吉 智裕氏

セキュリティワーキンググループは、2016年のSeason1から今回のSeason8まで継続的に活動を行ってきました。

やるべきアウトプットは、「IoTをやる際には初めからセキュリティについて意識してもらうことだ」とSeason1で決定。セキュリティは重要であるにも関わらず、後回しされることが多い現実から、啓蒙活動に取り組みたいとしました。初回のSeason1では、セキュリティが整備されていなかったために起きた事故の例を紹介。対策の考え方として、閉域網の利用やデータをハードに残さないといった例を提示しました。

続くSeason2では、ビジネスを模索するため、ITセキュリティ人材育成・IoTセキュリティリスクコンサルティング・ITセキュリティ保険の3領域について調査を実施。また、各団体からIoTセキュリティのガイドラインがリリースされ、国内外を含めIoTが盛り上がりを見せてきました。連携を模索するためにIPAを訪問、ヒアリングも行っています。

さらに、東京都立産業技術研究センターの補助金制度により、500万円を獲得。Season3~5にかけてIoTセキュリティのテストベッド構築にかかる費用に充てられました。また、Season3~5では、あいおいニッセイ同和損保がワーキンググループに参画したため、IoT保険の検討も開始されました。

Season6では、ワーキンググループで作ったものを広めるための啓蒙活動を実施。総務省を巻き込んでのIoTセキュリティセミナーを開催しました。Season7からは、参画メンバーの持っているDeguゲートウェイやHULFT IoT Edge Streaming等の商材を活かした「FA向けセキュアIoTパッケージ」を連携して実現する方向を模索しながら活動しました。

全シーズンを経て、メンバー間でビジネススキームを作れるようになってきたため、今後は現メンバーによるクローズドなコミュニティとして活動を継続。ビジネス協業や相談、情報交換の場として機能させていきます。4年間を経て、まだまだIoTにおいてセキュリティに予算を割くところは少ないのが現実です。IoTセキュリティの必要性が認知されるには、IoTの普及がもっと進む必要があります。

パネルディスカッション「アフターコロナ時代に備える」

2020年6月16日にオンライン開催されたIoTパートナーコミュニティフォーラムSeason8。パネルディスカッションでは、ファシリテーターに株式会社ウフルの八子知礼、パネリストに同 杉山恒司、株式会社アールジーンの小泉耕二氏を迎え、「アフターコロナ時代に備える」をテーマにディカッションが行われました。

イントロダクション:コロナ禍を振り返る

ディスカッション前に、コロナ禍の振り返りを八子が行いました。求められた「外出自粛」の本質について、八子は「出ないことではなく、密を避けることだった」と語ります。その他、対処法が現時点で確立されていないこと、正しい情報が得づらくデマ情報も多く流布したことに関しても、本質を理解した上で自分の行動を判断、決定する必要があったといえるでしょう。

続いて語られた企業業績に対する影響では、現在進行形で厳しさが増してきていること、それにより、今後の失業者数の増加が懸念されることに触れました。業績の下方修正も多く行われているのが現状です。

コロナ収束後の日常生活の変化については、ソーシャルディスタンスの確保については著しく元に戻るが、一気に進んだテレワークやオンライン診療については、わずかしか元に戻らないという傾向がみられ、これは東日本大震災などの時とは異なるトレンドといえます。

コロナ禍により、結局何が変化したのでしょうか。まず挙げられるのは、外出自粛による物理的移動・距離です。次に、外出機会の減少による精神的・肉体的な影響が挙げられます。対面で人と関わる機会が減ったことにより、社会との関係性に変化を受けた人もいるでしょう。出社がなくなった人はワークスタイルが変わり、家にいる時間が増えたことでライフスタイルにも良くも悪くも変化が起こります。生活が一変することで、価値観そのものが変わった人もいるでしょう。また、リテラシーの度合によって行動規範に変化も生じました。例として、デマを信じてしまいトイレットペーパーや食品の買いだめに走ってしまったことが挙げられます。

一方、リテラシーの高い人と低い人によって、行動規範への影響には違いがあります。また、リテラシーがあった場合でも、行動規範が他者依存的な人の場合は、外出判断などを自分で下せず、行動への影響が大きかったといえるでしょう。また、上位概念となる価値観に変化が起きた人は、すべてにおいて大きな変化が起こったかもしれません。

一方、もともと行動規範を自分で定められる生活を送ってきた人は、コロナ禍によるワークスタイル、ライフスタイルが受ける影響は少なかったでしょう。このように、その人が置かれた環境やリテラシーによって、大きく変わったものと変わらないものがあるといえます。

テーマ1:この2ヵ月、どんな風に過ごしてきたか?ライフスタイル・ワークスタイルの変化は?

ディスカッションでは、まず小泉氏、杉山の2ヵ月間の過ごし方について質問が投げかけられました。小泉氏は「オフィス内の観葉植物の水やりと郵便の受け取りにオフィスに定期的に出社していた」と語ります。一方で、会議はオンラインが中心になり、オフラインは期間中1、2件。オフラインで行っていた個別取材は現地に行けないことからできなくなってしまったといいます。仕事では、コロナ禍を機会にウェビナーの応援を開始。個人的には、配信ノウハウを培うためにYouTubeでの配信活動を始めたといいます。また、夜に飲む機会が激減したことから、健康になったと感じているとも語りました。

一方、基本的に家で過ごしていたと語る杉山。杉山も小泉氏と同様、飲んで夜中・朝に帰宅する生活がなくなった点が大きな変化だったといいます。仕事時間には変化が見られませんでしたが、内訳には変化が起こり、仕事のみに集中する時間だけではなく、育児をしながら仕事をする時間が多くなったといいます。

「円の中心に仕事があり、周辺に趣味や家族があるのが55年生きてきた私のスタイルでした。コロナ禍により、円の中心が入れ替わり、真ん中に家族が、周辺が仕事になったと感じます。このスタイルの変化は結構大きなものです。ただ、仕事量には変化がなく、むしろテレカンが4倍になるなど増えています」(杉山)

テーマ2:コロナ禍でも変わらなかったことは何か?

小泉氏は「もっとDXが進んでいたらと思ったことが多い」と語ります。配送車の不足問題を解決するドローン配送を例に挙げ、「できない理由を挙げるのではなく、トライするマインドになっていれば良かったと思う」といいます。コロナ禍でもDXが大きく前に進むことがなかったため、働きかけていかなければならない、次に期待したいと語りました。

杉山は、以前から国がIT化を進めるよう言っていたにも関わらず、取り組んでこなかった自治体・会社・学校につけが回ってきたと指摘します。IT業界の人は、以前からリモートワークを行ってきたため、今回においてもあまり大きく変わることはありませんでした。しかし、IT会社でもリモート可能部門と困難部門が存在しているため、いち早く洗い出し、IT施策を導入することが必要です。また、在宅ワークによる電気代の補助など、仕組み作りを考える必要性にも言及。時代に合わせた社則の変更も必要だと語りました。

テーマ3:今後どうなっていくと考えるか?

今後の変化で楽観視している点について、小泉氏は「リーマンショック以降、BCP対策として産業界で大きなテーマとなっている、サプライチェーンを世界中に分散するといった取り組みについて、これを機にさすがに進めようとする動きが出てくるのではないか」と語ります。杉山も「やらざるを得なくて体験したことが大きい」と小泉氏に同意。この2~3ヵ月間、半ば強制的にテレワークに代表されるITを体感し、その便利さを知ったことが、今後2~3年の世界を大きく変えるきっかけになると語りました。

一方、悲観している点について、杉山は「まだワクチンがないこと」だといいます。第2波、第3波の可能性に加え、日本では巨大災害が起こる可能性もあります。しかし、一方で「大変さは熱量になり、ある意味では面白さがある」とも語りました。

小泉氏は、「コロナ禍を既得権益のネタにしている人がこの期に及んでもいる。安泰な立場にいる人は、今を切り抜けることよりも自分の利益優先になってしまうことが露呈しました。悲しいですね」と語りました。

テーマ4:今後IoT・デジタルの力で何をなすべきなのか?

小泉氏は、コロナ禍における世界各国の事例が取り上げられ始めるなかで、DXによって恩恵を受けた事例があまりクローズアップされないと感じていると語ります。中国でのドローンによる薬剤散布の事例を挙げ、このような事例を周知、説明していくことが必要だと指摘しました。また、企業としての活動に関しては、今年のものづくり白書のダイナミックケイパビリティについて書かれている内容が参考になると紹介。自社の強みを世の中の変化に適合させるためにデジタル技術が活用できるとし、今まさに訪れている不確実な時代に対応できる活動ができればと語りました。

杉山は、「ウフルも自粛開始1ヵ月は押印・領収書提出のための出社があった」とし、「自社の状況で、おかしいと思う部分を改善していくことが必要」といいます。現に、ウフルでは出社不要に変化しました。「指摘、行動することを否とする会社であれば、いっそ辞めてどんどん変えていこうという勇気ある会社に移ったほうがいい。こんな時代だからこそ、自分の価値を知らしめる生活に変えたほうがいいでしょう。それができるのがIoTやデジタルの力ですから」と指摘しました。

利便性向上を進める際に気を付けるべき点は何かの問いに対して、小泉氏は率先して「やって、良かった」と思える結果を見せつつ、考え方を変えさせていくしかないと回答。杉山は、最初にやるべきことは課題も含めた可視化であり、その改善を「まずはやってみる」が原点だと語りました。また、ITに携わる人ができることに、「わかっているのに気付けていないことを気付かせる」ことがあるといいます。異なる業種の視点から見ると、簡単に気づけることも多いのです。

デジタル・アナログの一方に偏るのではなく、まずは体現して見せ、真似てもらい心地よさを体感してもらうことで「悪くない」と気付いていく。これは一朝一夕ではできないため、常日頃からやっていく必要があると八子がまとめ、締めとなりました。

4年間の活動の振り返り

パネルディスカッションの後は、事務局を務める株式会社ウフルの池澤将弘が、IoTパートナーコミュニティの活動を振り返りました。2016年5月に発足してから約4年間、7つのワーキンググループでスタートした活動ですが、最終的にはのべ11のワーキンググループが活動しました。それぞれワーキンググループの活動テーマはシーズンより様々でしたが、次のような多様な活動を行ってきました。

・実店舗や遠隔地での実証実験
・展示会やセミナーの開催
・公募への共同応募
・IoTパートナーコミュニティ外の企業との連携
・オープンフォーラムでの成果発表

中には、公募で採択されたり、補助金を獲得したり、ソリューションとして世の中にリリースするといった、素晴らしい成果を得たものもありました。また、毎年12月にはオープンフォーラムを開催し、ワーキンググループの成果発表に加え、著名な方々に基調講演として登壇いただくなど、毎回規模を拡大しながら、会員以外の多くの方々にもその成果を発表してきました。

池澤は、これらの活動を振り返り、「実データ、現場でのPoC」と「協創」を重要なポイントとして挙げました。

最後に、ワーキンググループをけん引してくれたリーダー達、本業が忙しい中、積極的に活動に参加してくれたメンバー達、テストの場など様々なリソースを提供してくれた皆様に感謝の意を述べるとともに、今後も新たな形での協創を継続していくことを呼び掛け、フォーラムを締めくくりました。

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