IoTパートナーコミュニティフォーラム Season-8 レポート #01
2020年6月16日、「IoTパートナーコミュニティフォーラム Season-8」が開催されました。
IoTパートナーコミュニティはオープンイノベーションを通じたビジネス創出を目的とした活動で、4年目となる第8期は、48社が参加しています。半年毎の活動報告の場であるフォーラムは、新型コロナウィルス感染予防のため、初のオンライン開催となりました。
また、当コミュニティは今期をもって発展的解消とするため、4年の活動を振り返る最後のフォーラムとなりました。
イベントは7つのワーキンググループの活動報告、IoTNEWS小泉耕二氏を招いてのパネルディスカッション、4年間の活動の振り返りの3部構成で行われました。
第1弾となる今回のレポートでは、7つのワーキンググループのうち5つの発表をレポートします。
ワーキンググループ活動成果発表
IoT×AI ワーキンググループ
Season-8 エッジAIの可能性を探る
株式会社セゾン情報システムズ 梅崎猛氏
IoT×AIワーキンググループの今期テーマは、「エッジAIの可能性を探る」。期中にコロナ禍となり、今期はもっぱらオンラインでの活動となりました。
コロナ禍により、テーマ範囲にも変化が起こりました。当初はエッジAIに限っていましたが、ビジネス環境の変化もあり、より広い範囲から可能性を探ることとしました。今期の活動であるビジネスの模索のため、今回は以下4つの観点から独断と偏見でソリューションを選出しました。
・ペインポイントを上手くカバーできている
・ホワイトスペースを上手く狙っている
・カテゴリートップとなる何かがある
・スピード感がある
1月、2月期は、コロナ禍が起きる前の平和な時期でした。選定したのは、アグテックの雑草除去ソリューションと真空調理器具Nomikuです。雑草除去は、手間がかかり現状10平米3,000円程度かかっている作業費の削減に繋げられること、Nomikuはスマートフォンアプリと連動することで真空調理の難易度を下げられること、機械に任せることで美味しく仕上げられることでカテゴリートップを狙えることを選定理由としました。
6月、メガネスーパーのウェアラブル「b.g.」がアワードを受賞しました。カテゴリートップを持つ製品には、価格が高くても必要とされるニーズがあるため、価格競争に巻き込まれません。b.g.がカテゴリートップである、または狙えるエリアには以下のエリアが挙げられます。
・見やすさ、鮮明度
・軽さ
・眼鏡による視力調整
・掛け心地
他社製品のペインポイントである「鮮明に見えない」をカバーしている点が強みです。b.g.の応用例として、花の名前を認識する「ハナノナ」、「きのこ判定機」といったアプリがあります。その他、b.g.にAIのアドバンテージを掛け合わせることで、下図の使途が考えられます。
これまで、IoT分野におけるAIの活用は画像・機械データを蓄積し、演繹的な比較学習が主流でした。今後期待できる進展は、リアルタイム化。また、ヒトを中心とした利活用のため、特に「目(視覚)」や「耳(聴覚)」が入力系・出力系として重要になるでしょう。
地域創生ワーキンググループ
アステリア株式会社 松浦真弓氏/株式会社Skeed 柴田巧一氏
地域創生ワーキンググループの発表は、前半を松浦氏、後半を柴田氏が務めました。まず前半の発表テーマは「秋田県仙北市の取組事例とその後」です。
秋田県仙北市は、乳頭温泉などの有名な温泉地を有しており、温泉の有毒ガスによる事故の防止が課題となっています。この有毒ガスの検知し、作業員の安全を守る方法を、アステリアとSkeedが協業して検討、2019年9月に実証実験を行いました。
源泉を分配する施設である分湯槽にSkeedのガス検知センサーと通信モジュールを備え付け、インターネット経由でガスの濃度データをクラウドに蓄積し、作業員や市役所職員のスマートフォンのモバイルアプリでリアルタイムかつ継続的に、ガスの濃度を監視できる仕組みです。モバイルデバイスには、アステリアのPlatioで作成した温泉ガスの監視アプリが入れられています。なお、Platioとは、100種ほどの業務アプリのテンプレートからカスタマイズすることで、自社の業務に合ったモバイルアプリを作成・活用できるサービスです。
実証後、点検時以外の時間でも継続的にガス濃度を確認できるといった効果を収める一方で、依然として紙やホワイトボードといった手法で作業記録が行われていたため、作業員の日々の仕事の負荷軽減という観点では課題が残りました。そこで、作業報告にもPlatioを使用し、業務負荷を減らす提案を行いました。
その後、コロナウイルスの感染拡大が課題となり、市民への安全なサービスの提供と市役所職員の健康管理を目的に、Platioで検温レポートアプリを作成し、運用しました。職員が自宅で検温した結果をモバイルで入力し、本人と労務担当者のみが把握できるため、プライバシーに配慮しつつ、発熱の報告があったときには通知を受け取れる仕組みです。現在では、勤怠管理や日報などの10の機能を搭載した、withコロナ時代の「新しい生活様式」アプリへと熟成し、多数の企業で活用されています。
後半は、柴田氏による「IoTを活用した地域課題への取組&ビジネス化」の発表が行われました。
徳島市企業「ニタコンサルタント」と共同で、とくしまIoT・AI等ソリューション実装事業費補助金に応募し、採択。AI等を利用して冠水情報をリアルタイム伝達できるシステムの構築を行いました。
ポイントは、多数の地点で検出する必要があること。冠水センサーを多く必要とするため、一個当たりのコスト、管理コストの削減が求められます。そのため、電池は水に浸かると発電する自然エネルギーのものを採用、消耗品としてばらまける冠水センサーを開発しました。
現在は、国交省によるスマートシティモデル事業の重点事業化促進プロジェクトに選定。冠水検知を盛り込む形で、計画策定、提案中です。
ウェアラブル活用ワーキンググループ
株式会社Enhanlabo 座安剛史氏
ウェアラブル活用ワーキンググループは、ウェアラブル×IoTのエコシステムを共に作っていくことを主旨とし、活動しています。
今期は、当初前回行った「ウェアラブル×サバゲ―ハッカソン」をベースとした活動の継続を予定していました。しかし、集合型エンターテイメントであるサバゲ―はコロナ禍の影響により続行が困難となり、ペンディングに。逆にテレワークは、その重要性が急激に高まる状況となったため、ウェアラブルを活用したテレワーク拡張の可能性を探る方向にシフトしました。
ワーキンググループ内の議論で出た困りごとには、以下のものがありました。
・営業が外出先でのWeb会議場所に困る(スマホをかざしながらやりづらいことがある)
・遠隔研修にて、サブモニターが欲しいシーンがある(ワイプではレイアウト上作業画面が欠けてしまう)
・納品後のアフターサービス要員が不足している(技術者の現地派遣が必要となるケース)
そこで、セゾン情報システムズにて、AIに関するオンラインのハンズオンをウェアラブル端末を用いてトライアル実施。セミナー資料をウェアラブルに投影し、パソコン上で作業してもらいました。
結果、テキスト量が多い資料の場合は使い勝手が芳しくない一方で、画面の見比べをする際には視線の移動が減る点にメリットがあるとの評価を得ました。全体的な動きを見せるような動画系コンテンツは、より親和性が高くなります。
最近は、美大や理美容学校、料理やトリマー、医療といった実技での指導を要する学校において、オンライン授業の難しさが課題として挙げられています。ウェアラブル端末を使えば、ハンズオンセミナーや技術育成のリモート指導が可能となるでしょう。
ただ、SI領域でソースコードが見えるハンズオンでウェアラブル端末が実用に耐えうるには、ハードウェアが進化しなければ難しいのが現状です。当面は、ハンズフリーのメリットや動画コンテンツが活きる分野をビジネスにおけるターゲットとし、利用シーンの拡大を模索していくことが望ましいと考えています。
物流ワーキンググループ
物流は新領域へ
株式会社日立物流 桜田崇治氏
物流ワーキンググループの発表では、まずコロナ禍における物流について、実際に起きた事例を合わせて、現状の思索が共有されました。
コロナ禍に入り、トイレットペーパー不足のデマが生じました。実際には通常通り供給できるにも関わらず、デマにより店頭からはトイレットペーパーが姿を消し、混乱を抑えるためにメーカーがSNSで倉庫に在庫がたくさんある様子を投稿したできごとです。
倉庫には在庫があるにも関わらず、店頭になぜ並ばないのかといった点についても報道され、トイレットペーパーの在庫状況に関しては市民にも理解が進んだことでしょう。一方で、マスクや消毒液、カップ麺、小麦粉など、店舗の棚に在庫が十分に並ばなくなったものは多々あり、これらの在庫状況については周知されていません。
この現象の背景には、在庫情報が各所で断絶されており、公開されていない現状があります。上流・下流の会社間ですら共有されていないのです。持っている情報をどう開示していくのかといった話がなされなければ、解決には繋がらないのが現状です。
次いで、物流ワーキンググループの軌跡について発表されました。2017年から始まった活動内容は、下図の通りです。
2017年には、IoTによる効率化として、ドライバーへの配送ノウハウの共有について活動しました。
我々の取り組みはここでストップしましたが、例えばOPTIMINDのサービス「Loogia」では、ラストワンマイルに特化し、走行速度のみならず、駐車位置も学習し、ベテランのノウハウを反映したサービスを提供しています。
2018年は、UXの向上を掲げ、通知が発生するソリューションとの連携を行い、通知基盤の構築を進めました。
2019年には、ビジネスに耐えうるサービスを目指し、基地局測位による位置情報の取得を実施。物流に合った位置情報の測位を行いました。
Season8を迎える今シーズンのテーマは「ドラレコ画像・動画における道路・標識・建物検知」でした。安全のためについているドラレコの画像や動画を有効活用し、渋滞や事故、駐車場の混雑等の状況をリアルタイムに把握できる仕組みを考えています。Googleがやれば早く実現できるものですが、輸送事業者のドラレコ映像での情報の信頼性に価値があり、一定のニーズがあると考えています。なお、今期は検討のみとなりました。
オフィスIoT ワーキンググループ
オプテックス株式会社 河相長流氏
オフィスIoTワーキンググループは、オフィスの課題を解決するIoTビジネスの協創を目的とし、2017年1月から活動を始め、主なテーマは社内コミュニケーションの活性化、生産性の向上・効率化です。
過去には、社員と共有備品の位置情報をIoTにより把握するマップ、物流ワーキンググループと連携しての取組を行ってきました。また、オフィスIoTで使えるソリューションを集めた「オフィスIoTソリューションガイド」も作成しています。
最新版はこちらからダウンロードできます。→ 「オフィスIoTソリューションガイド」
ここ1年では、導入ハードルが高いIoTの利便性をまず使って試してもらえるよう、2ヵ月間限定のローコストトライアルパッケージを構想しました。トイレ・会議室の空き状況の可視化、社員のストレスを可視化する3種を用意。データ分析レポートも提供するものです。
このトライアルパッケージを販売していくためには、代理店やSIerが必須となります。そのため、Season8ではSIerの募集を予定していました。
しかし、コロナ禍により外的環境が一変します。テレワークが激増し、オフィスを利用する人の数が激減。東京では、中小企業も含めて6割以上がテレワークとなっています。緊急事態宣言は解除されましたが、コロナ前に戻ることはほぼないといっていいでしょう。
海外の大企業では在宅勤務中心に切り替えるところが多く、国内企業でもGMOインターネットグループでは従業員4,000人を在宅勤務に切り替え、日立製作所では出社を週1~2回にするなど、在宅勤務推奨の動きが顕著です。
このような変化により、トライアルパッケージも一旦ストップせざるを得ないとの結論に至りました。オフィスを縮小し、テレワークにシフトすることに伴い、IoTの活用シーンも変化しました。その変化に対応していく必要があるためです。
しかし、オフィスIoTワーキンググループでは、その活動の外でも以下に示すような参画企業間の協創事例が複数誕生しています。
この度、このコミュニティは発展的解消となりますが、今後も各社のノウハウ、ソリューションを活かしたアライアンスにより、このようなビジネス創出を目指していきます。
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