uhuru

IoT・AIをオフィスに導入、センサーにより収集されたデータを基にオフィス環境の改善を図る

株式会社梓設計

株式会社梓設計 アーキテクト部門 BASE 03 一級建築士 岩瀬 功樹 氏(写真左)
アーキテクト部門 AX-Team コンピュテーショナルデザイナー 主任 一級建築士 渡邊 圭 氏(写真右)

IoT・AIをオフィスに導入、センサーにより収集されたデータを基にオフィス環境の改善を図る

空港施設やスポーツ施設をはじめ、オフィスや商業施設など、多種多様な施設の建築設計・工事監理・コンサルタント業務を行う株式会社梓設計。2019年8月に竣工した新本社は、快適で機能的なオフィスを表彰する第33回「日経ニューオフィス賞」経済産業大臣賞を受賞しました。この賞は「ニューオフィス」づくりの普及・促進を図ることを目的とし、創意と工夫をこらしたオフィスを表彰するもので、創造性を高める働き方を誘発する環境か、ITを活用した知的生産活動の場となっているかなどが具体的な審査の視点となっています。梓設計は、新オフィス設計に当たり活用を決めたIoT・AIの導⼊を、ウフルに依頼しました。

IoTを導入し、データを活かしたオフィス設計・改善施策を

新たなオフィスを作るにあたり、梓設計ではまず社内コンペを実施しました。このコンペに、IoTやAIを活用した内容で応募したのが、岩瀬氏と渡邊氏を始めとしたチームです。かねてより、岩瀬氏は建築にIoTやAIがあまり活用されていない点への課題意識を抱いていたといいます。

「働き方改革など、働き方が新しくなっていくことに対し、オフィスが進化に対応しきれていないと感じていたんです。オフィス環境は均一な空間にすることがこれまでのセオリー。しかし、働き方を柔軟にしていくためには、フレキシブルな照明や空調に変えていく必要があります。エネルギー消費量の観点からしても、一括管理するより、柔軟に調整できるほうがいい。自主的にAIを勉強していたこともあり、建築でもIoTやAIを活用できないかと思っていたんです」(岩瀬氏)

一方、学生時代にテクノロジーを活用したスマートハウスなどを研究していた渡邊氏。オフィス移転を機に、研究経験を大空間でも試してみたいと思ったといいます。両氏は、コンペを機に6人でチームを組み、オフィスへのIoT活用方法を模索。結果、コンペでは3位に。社長による「上位チームが出したいいアイデアは採り入れよう」との決定により、IoTとAIの活用を実現すべく、両氏はプロジェクトチームに加わりました。

オフィス移転に向けた定例会議では、IoTに関してのプレゼンを繰り返し実施。元より高いテクノロジーに対するリテラシーを持っていた上層部に対し、より細かな内容を説明しました。難しかったのは、実証実験(PoC)への理解だったといいます。

「建築業界は数字で戦う人間が多く、費用対効果に対してシビアです。しかし、IoTやAI導入は、まずはPoCで改善効果を検証する必要があります。まず1年目はPoCやデータ収集、2年目にデータ分析、以降が実空間への反映フェーズだということを丁寧に説明し、投資に値することを説得、希望予算の確保に至れました」(岩瀬氏)
梓設計  岩瀬 功樹 氏

最終目標への理解と伴走姿勢を信頼し、ウフルにIoT導入を依頼

オフィスへのIoT・AI の活用が決まった後、ウフルに問い合わせをした渡邊氏。多くのカンファレンスを見るなかで、ウフルのホームページを見ていたことが、ウフルを知ったきっかけだったといいます。プロジェクト開始に際してベンダーを探したところ、先に出てくる情報は大手企業のソリューションでした。しかし、大手企業のソリューションはパッケージングされたデバイスであり、そのまま導入することを想定したものです。個別ケースへの柔軟な対応を欲する梓設計のニーズとは合致しませんでした。

「大手以外にも今回の取り組みにマッチするベンダーは見当たらず、ウフルさんに問い合わせました。ウフルさんには当社が何を求めているのかをしっかりヒアリングしていただき、当社が求めていたコンサル的な部分も担っていただけると感じました」(渡邊氏)

「IoTやAIの導入は、あくまでも皮切りに過ぎません。我々の目標は、クライアントに自社オフィスで実践した知見やノウハウを活かし、ご提案できるようになること。ウフルさんには、早期段階から我々の目的がIoTやAIの単なる導入ではなく、その先にあることを理解していただけたと感じました。直感的に信頼できると思いましたね」(岩瀬氏)

新型コロナウイルス感染症予防にデータ分析が活躍

本プロジェクトは自社で設計する新オフィスへのIoT導入だったことから、適したセンサーの位置決め、それに伴う電源の数や位置を社内の設備担当者とすり合わせることが可能でした。快適なオフィス空間において、センサーが悪目立ちすることは避けたいもの。梓設計のオフィスでは、センサーの存在が視界に入ることのないように設置位置が工夫されています。建築建設業界にはセンサーの設置位置が検証された図面が存在していません。基準を守りつつも目につかないように設置できるIoT図面が今後できていくだろうと岩瀬氏は語ります。

梓設計のオフィスでセンサーが収集しているデータは、社員の位置情報、社内エリアごとの温湿度、照度、CO2濃度、気圧、騒音情報です。これらのデータは、2カ所ある入口部分にあるサイネージで常時表示されています。図らずも、新オフィスに移行したのちに新型コロナウイルス感染症が拡大したなかで、現在特に活用されているのが社員の位置を表した分布図や、エリアごとの騒音情報だといいます。

「当社は完全フリーアドレスとチームアドレスの間の存在の誘導型フリーアドレス制です。出勤時に分布図を確認し、密にならない場所を選んでいる方もいます。また、騒音情報の可視化は、クライアントとのオンライン会議など、ビデオ通話で露呈した音問題解決に役立ちました。IoTのデータを、通話可能エリアと不可能エリアを決めるのに活用。騒音への個人の感覚に頼らないエビデンスを確認することで、全社的な納得のいく方針が決められました」(岩瀬氏)

岩瀬氏、渡邊氏がIoT・AI 活用により実現させたかったのは、データ活用による生産性向上だといいます。

「環境データを取るのはいわば当たり前で、発想もしやすい。ただ、感情や生産性向上につながるデータを収集したいとの発想はあっても、我々には必要となるデータ収集方法がわかりません。ウフルさんには要望を伝えたうえで、実現可能な取り組みをご提案していただいています」(岩瀬氏)

「新型コロナウイルス感染症への対応が急務となったため、生産性につながるデータ取得はまだ進められていません。現在は、コロナ禍以後の会社やオフィスのあり方として、社員のフィジカル、メンタルケアをデータ活用することで上手くできないか、検討を重ねています。少人数単位で試し始めたのが、Apple Watchを活用した運動不足解消の取り組みです。ゆくゆくは全社員に配布し、健康状態をモニタリング・サポートして健康経営につなげていくことが目標。データ収集や分析の部分でウフルさんにご協力いただきたいです」(渡邊氏)
梓設計 渡邊 圭 氏

「建てたあと」にも携われる新しい設計事務所に

今後、自社内での取り組みとして進めたいのは、取得データの掛け合わせによる分析です。特に、感染予防の観点からCO2濃度の分析は喫緊の課題。CO2濃度データと人口密度を掛け合わせるなど、他のデータと組み合わせて可視化することで、曖昧ではないデータを基にした感染対策につながる空気の質のひとつの分析になると期待しています。

「当社のオフィスのコンセプトは『成長するオフィス』。その根幹を担うのがIoTです。現在、2週間に1回オフィスの運営会議を行い、各データを見ながら改善策を考えています」(渡邊氏)

「これまで、我々のような組織建築設計事務所は『企画し、図面を作成し、建設に関して監理するところまでが主体業務』とし、完成後にコンセプトが本当に達成できたのか、ご満足いただけているのかに関して、フィードバックを得る機会は少ないです。IoTやAIを導入することで、ファクトをもって結果を確かめられるようになります。建設後にも設計事務所が関わっていける可能性がある。本取り組み前に描いていたゴールに向けて、今後も取り組みを進めていきたいです」(岩瀬氏)

ウフルに対し、「今後も人に関するデータ取得への知見部分で協力していただきたい」と語る両氏。在宅勤務、オフィス勤務のどちらかに偏るのではなく、どのような働き方であっても最高のパフォーマンスを発揮できる環境構築に取り組みたいと語ります。

「これまでは、電気設備、通信、セキュリティなど、各所がそれぞれ独立しており、統括するポジションを担うプレイヤーがあまり存在していませんでした。建設業界はまだまだ古く、DXも進んでいません。スマートソリューションはメーカーが個々に作っていますが、各ソリューションをつなげるプラットフォーマーがいなかったのです。ウフルさんには、今後も我々と一緒に建設業界をアップデートしてもらいたいと思っています」(岩瀬氏)

快適な労働環境に加え、安心して働けるオフィスも求められるようになった2020年。最高の働き方ができるオフィス作りを、今後も共に進めていきます。

会社概要

株式会社 梓設計

梓設計ロゴ

東京都大田区羽田旭町10-11MFIP羽田

1946年に創設した社員数635名の組織設計事務所。空港施設設計やスポーツ施設設計のシェアで強みを持つほか、庁舎、教育文化施設、医療福祉、物流施設、斎場、都市計画など、幅広く公共の施設を設計。
時代と共に変わる社会ニーズに高いクオリティーで応えるため、①交通インフラ②スポーツ・エンターテインメント③ヘルスケア④都市商業⑤ワークプレイス⑥物流・生活インフラの6つのドメインを設置、ドメインごとに全社のノウハウを蓄積し専門性を高めプロジェクトに取り組める体制づくりを推進している。

事業内容:建築設計業務・工事監理業務・都市計画・地域計画・調査企画・コンサルタント業務

Contact

ご依頼・ご相談など、お問い合わせは、
下記フォームからお願いいたします。