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学校等向けアンケート調査をWEB調査システムへ、Excelからの脱却により業務負荷低減と迅速性を向上
<Salesforce・Tableau活用>

写真左より
 文部科学省 総合教育政策局 教育DX推進室長 桐生 崇 様
 文部科学省 初等中等教育局 教育課程課 教育課程総括係 伊藤春香 様
 文部科学省 初等中等教育局 教育課程課 教育課程総括係 橋本美穂 様
 文部科学省 総合教育政策局 教育DX推進室 澁木 久哉 様


文部科学省各課では、各課が所管している分野における取組実態を把握する観点から、学校を中心に各都道府県の教育委員会と市区町村の教育委員会を介して、調査を実施しています。従来はExcel形式の調査票をメールで送受信する方式でしたが、このたびSalesforceとTableauを用いた『文部科学省WEB調査システム(EduSurvey)』を構築しました。
回答が容易であることや、回答データがリアルタイムに反映・蓄積され、把握が可能になったこと、経由機関における回答の集計作業が不要になったこと等から、文部科学省・教育委員会・学校等の作業負担の大幅低減や迅速性向上を実現しました。

■ Excel調査票による業務負担に課題
文部科学省各課では、教育委員会や学校等に対して統計調査を行っています。うち、法律で定められている調査以外の「業務調査」は、対象が47都道府県、約1,700の市町村の教育委員会、小中高の学校が約35,000校と多く、概算で年間約250件と頻度も高く行っています。この業務調査は、実態を正確に把握し、これから新しく実施する政策の方向性を決めるために必要不可欠な調査です。

しかし、その業務調査の手法に課題がありました。まず各課の担当者がExcel等の形式で調査票を作成した後、各都道府県の教育委員会へメール送付し、その後、各市区町村の教育委員会、各学校へと受け渡されていました。また学校の担当者が回答を入力した後は、教育委員会等が各学校の回答結果を取りまとめ、最終的に文部科学省に提出されていました。この運用において正確性を担保しながら実施することは非常に労力がかかるものでした。また関係機関が非常に多く、一つの調査実施においても結果が出るまでに時間を要していました。場合により途中経過段階で内容を把握することは、短い時間の中で政策の方向性を検討する重要な要素でもあるため、調査状況のリアルタイムでの把握にも課題を持っていました。

主な課題として、
 ・Excel形式の調査票の作業負担
 ・調査の途中経過の確認不可(リアルタイム性)
 ・問い合わせ等の情報伝達の煩雑さ
の3点があったといいます。

「Excelの調査票を教育委員会から学校へと受け渡す工程が大きな手間でした。また最終的にExcel調査票をすべて統合するときに、手作業で行うので間違いが起きやすい点も負担でした。これらの非効率さは、働き方改革の観点からも是正すべきと感じていました」
「調査の途中経過を、リアルタイムで確認できなかったのも課題でした。政策の方向性を早期から決定していくために、途中段階でも早く回答を確認したいというときにそれができず、問題意識を感じていました」(桐生氏)

「回答に間違いがあった場合、教育委員会等の担当者を通じて、再度、学校に回答していただくことが多くありました。この情報伝達・コミュニケーション面の煩雑さも課題でした」(伊藤氏)
 
 

■ クラウドを活用した「文部科学省WEB調査システム(通称、EduSurvey)」導入を決断
そこでクラウドを利用した『文部科学省WEB調査システム(以下、EduSurvey)』の構築を決断されました。同システムは、SalesforceとTableauを用いてクラウド環境を介し、アンケート作成・回答、管理や調査結果の自動集約を行うものです。
クラウドを活用したシステム構築を検討した理由の一つとして、桐生氏は1人1台コンピューター端末を講じる「GIGAスクール構想」により、学校ではインターネット環境が身近になったことを挙げます。

「クラウド選定の理由として、GIGAスクール構想で、学校のネットワークが強くなったというのが大きいものでした。実際、データのやりとりが非常に簡単になったと聞きます。
また、従来は学校の回答担当者がパソコンの前に座らないと回答できなかったところ、EduSurvey導入後は、デバイスに依存せず、インターネットに接続できる環境であれば、タブレット等でも回答ができるようになりました。いつでもどこでも行えるという点も、クラウドのメリットです」(桐生氏)

■ パッケージングされたSaaSを要件とした理由
EduSurveyの要件には、開発期間の短縮化やインターフェースの利便性の高さから、SaaSの利用を前提としていました。EduSurveyは、様々な関連機関の関係者が携わるため、特に権限設定の粒度や、使いやすいインターフェースということを強く意識したといいます。

「管理者権限が細かく設定できる等、実現したかった大方の機能があらかじめパッケージングされており、すぐに使えるという点がSaaSを選んだ大きな理由です。また、専門知識が不要で、インターフェースを見れば、誰もが使いやすい点も大きかったですね」(桐生氏)

「SaaSでなければ、1から10まですべてを設計し、膨大な期間をかけて作る必要があります。そうなると費用もかかります。また将来の拡張性も見据えて、利便性の高いSaaSを選択しました」(澁木氏)
 
 

■ カスタマイズは最小限に。「権限設定」をこだわって実施
EduSurveyの導入にあたっては、カスタマイズを最小限にしました。できるだけコストをかけずに、個別開発は最小限にして基本的な機能を有効的に使うという狙いがあったといいます。またカスタマイズを実施することでSaaSのメリットを損なわない、運用を変更することにより現場に混乱を生じさせないようにという意識もあったそうです。そうした中、あえてこだわったのが、「権限設定」だったと澁木氏は話します。

「参照範囲の権限設定はかなりこだわっています。つまり見られる範囲を明確に区分けしたということです。例えば、都道府県間は、回答を参照できないのはもちろんのこと、同じ都道府県内でも公立学校と私立学校では管轄する組織が異なりますので、回答を参照できないようにしています。また、文科省の中の各課の間でも、調査ごとに参照権限を設定しました」(澁木氏)

各教育委員会等の管轄範囲を考慮した細かな権限設定が求められたとのこと、教育委員会や学校等の構成は、単純なピラミッド構造ではないため、適切な情報管理を行うためのカスタマイズが必要だったといいます。

「中には、特殊な組み合わせもあります。例えばA市とB市が小さい市であることから、まとめて一つの組合として学校を運営するというケースもあるのです。こうした特殊な設定権限もあり、この辺りの詳細な設定には、苦労しました」(澁木氏)

その他には、WEB調査システムの構築・設定を担ったセールスフォースやウフルには、「自動コード付与」機能や「CSVデータ出力」機能の要望を出したと澁木氏は話します。

「文科省では、各学校と教育委員会等に唯一のコードを振り、そのコードを各調査の回答に紐付けて、データ活用を進めていく取り組みを行っています。初めのうちは、回答する際、そのコードを手入力してもらっていましたが、打ち間違いがかなり発生し、仕様変更を依頼しました。まず自分の学校や教育委員会名で検索し、クリックしてもらえれば、自動的にコードを付与して回答できるという仕組みをウフルさんに作ってもらいました。また、調査回答データを都道府県/政令指定都市ごと、国立/公立/私立ごとでCSV形式に出力できるようにもしてもらいました」(澁木氏)

追加の要件においては、Salesforceのカスタマイズ性を活かし、迅速かつ安定品質を維持し、今後の業務フロー変更へ配慮したシステム環境を実現しています。

■ 「EduSurvey」導入により迅速性向上・ミス低減の効果も
EduSurveyの最大の効果は、スピーディーな調査完了、従来の方式で頻繁に起きていたExcelのバージョン管理の手間削減やミスの低減だといいます。
年間250件実施される調査をすべて移行すれば、相当な削減効果に繋がることは容易に想像ができます。

「作業時間の計測は行っていませんが、Excel調査票を突き合わせてミスを発見し、それを再送していた当時を考えれば、現在は大幅にスピードアップしたと考えます。今後は、定量的に効果を測っていきたいですね」(桐生氏)

「以前は、学校側で間違いが発覚した際、Excelのファイル名を変えて再送いただいていたため、最終的にどれが正しいファイルか分からなくなり、ミスが生じることもありました。このExcelファイルのバージョン管理によるミスがなくなったのは大きいです」(伊藤氏)

その他にも、教育委員会の調査担当者からは「各学校からあがってくるExcelファイルの取りまとめがなくなり、楽になった」等の評価をいただいているとのことです。

「UIは、不慣れな方にとってもわかりやすい設計ではないかと思います。電話で操作について説明する際も、同じ画面を見ながら説明できるので、便利になりました」(橋本氏)
 
 
 

■ 今後の展望と期待
“業務調査は、EduSurveyへ移行していきたい”

今後の展望と期待について桐生氏は「今後、学校等への業務調査は、このEduSurveyに可能な限り移行していきたい」と話します。

まだ運用し始めたばかりの『EduSurvey』、学校や担当課所より要望や改善案もあるといいます。
今後対象調査を拡大していくにあたり、現場の声を吸い上げ対応していき、文部科学省・教育委員会・学校等の作業負担の大幅低減や迅速性向上をより一層進められるシステムにしていきたいと語りました。

「調査を行う担当者のニーズ調査を行う必要性を感じています。現場の意見を吸い上げ、どこまでカスタマイズができるか、セールスフォースさんとウフルさんと調整しながら行いたいです。文部科学省・教育委員会・学校等の作業負担の大幅低減や迅速性向上をより一層進められるシステムである、という認知度を上げていきたいですね」(澁木氏)

※本事例の内容は、2022年7月取材時点のもです

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