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Salesforceを活用したオンライン申請システム:アンケート調査で9割が利便性を評価、県民サービスのデジタル化への挑戦


(写真左より)
企画財政部 行政・デジタル改革課 DX推進担当 主事 佐野 史尭 氏
企画財政部 行政・デジタル改革課 DX推進担当 主任 椎名 元 氏
企画財政部 行政・デジタル改革課 DX推進担当 主査 並木 皓人 氏
企画財政部 行政・デジタル改革課 DX推進担当 主幹 森田 康二朗 氏
企画財政部 行政・デジタル改革課 DX推進担当 主幹 福田 智樹 氏


埼玉県では、「県民サービスをより良くするためにはどうするか」を念頭にDXを推進しています。庁内のデジタル化を進めると同時に、社会全体がどのようにデジタルで変わるべきかを考えながら、未来の姿を描きつつ取り組んでいます。その一環として、ワンスオンリー申請を実現するシステムを構築し、オンライン申請の推進を図っています。利用者調査では9割が満足と回答し、利便性の高いオンライン申請を実現しています。

埼玉県のワンスオンリー申請システムへの取組の位置づけ

埼玉県の行政・デジタル改革課は、4年前の2020年に「デジタル」という言葉が課名に加わり、DX推進担当が設置されました。それまでは行政改革を中心に担当していましたが、デジタルを手段として取り入れる必要性を感じ、庁内のDX推進役を担うことになりました。最初の取組ステップではペーパーレス化を中心に取り組み、次のステップとして業務プロセス自体を変えるデジタル化へシフトしてきたといいます。ワンスオンリー申請を実現するシステムの構築も業務プロセスを変える一つの重要な取組として位置づけられています。

※ 行政手続において一度提出した情報を再度求められることなく、他の手続やサービスで利用できるようにするという考え方。

Salesforceとカミレスを活用したシステムを選定:紙の様式をそのまま電子化し抵抗感を解消

行政手続のオンライン化を実現するにあたり、大きな障壁となったのは、押印や紙でのやり取りを義務づけた制度の問題でした。これらは、図らずも新型コロナウイルス感染症の拡大防止をきっかけに制度の見直しを進め、ある程度解消ができてきたといいます。一方で、いわゆるデジタルデバイドへの対応や紙のメリットである視認性をどう担保できるかという利用者視点での課題は依然として残っていたことから、埼玉県ではこれらの課題を考慮しつつ、デジタルで完結できること、その他機能面や性能面を総合的に評価して、Salesforceとカミレス※1、帳票DX※2を活用したシステムを選定しました。

森田氏の写真

森田氏は「手続のオンライン化が進まない理由の一つに、申請様式が変わることへの抵抗感があります。Salesforce・カミレスのご提案では紙の様式をそのまま電子化できるため、手続を担当する職員にも理解してもらいやすく、モチベーションを保つ助けになると感じました」と説明します。

さらに、福田氏は「オンライン化していく際に、従来のような入力フォームだけでは、頭の中でこの様式のこの部分が入力フォームではここに対応して、などを考えながらの作業が必要になりますが、今回の仕組みだと紙の見た目をそのまま電子化していくという特徴があり、職員にとって自分たちの手続がどんな風にオンライン化されていくのかイメージしやすい。構築の局面でも参加しやすいという点も良かったと思います」と振り返ります。

福田氏の写真

■ カミレスを活用したオンライン申請イメージ(参考)

また、プラットフォームとして採用したSalesforceについても評価が高かったといいます。「SaaSとしての安定した基盤を持ち、オプション的に今後の展開をいろんな形で検討できるかなと考えています。プラットフォームとして幅広い対応ができるといった点も評価しています。またローコード・ノーコードツールとしての位置づけも重視していました。職員が内製化のスキルを身に付けていけば、将来的には自分たちで手続の追加もしていけるようになると考えています」(福田氏)

※1 カミレス
カミレスは、株式会社オプロが提供する、金融機関や行政機関での窓口手続や郵送手続における申請・承認プロセスを一括して実現する電子申請サービス。プラットフォームにSalesforceを採用している。

※2 帳票DX
帳票管理や帳票作成プロセスをデジタル化・自動化・内製化を支援するクラウド型の帳票サービス。株式会社オプロの提供サービス。

埼玉県が考えるSaaSの活用

今回の要件においては、SaaSが前提となっていました。SaaSを使うという選択においては、国の指針を受けてということもありますが、それ以外にも、これまで埼玉県庁が先進的に取り組んできたクラウド活用という背景があるといいます。

「埼玉県は早くからクラウドサービスの導入・活用を進めてきており、令和になる以前に、オンプレミスで構築されていた各種庁内システムの多くを、県のプライベートクラウド環境に統合しシステムのIaaSへの移行を実現していました。さらに、所有から利用への変化の中で、ソフトウェアのクラウド利用形態であるSaaS、PaaSの活用という選択も徐々に検討されていきました。今後の行政のシステムの在り方の議論において、オンプレミスのシステムではバージョンアップやセキュリティ対策へのキャッチアップが課題でしたが、現在はSaaSを上手く利用することでサービスを最適な形で提供していく、そういったモデルへの転換を進めています」(森田氏)

手続所管部署の職員が構築段階より参加、デジタル化のギャップ感を埋めていく

システム構築の過程では、各手続を所管する部署の職員が参加し、進めてきたと福田氏は語ります。「どういった申請フォーム、機能であれば実際の自分の業務にとって効率的であるか、実態にあっているかヒアリングしながら一緒にシステム構築を進めていきました。職員の中でもシステムに対しての得意不得意があり、デジタル化にどうしてもギャップを感じる人もいると思います。そうした面を意識し、もっと見やすくするために改善できるところは無いかなどを考えながら進めてきました」

導入支援を実施したウフルについては、迅速な対応やファシリテート、実現したいことを汲み取った提案に助けられたと振り返ります。

「原課の職員からシステム的に実現が難しい依頼があり、その落としどころを見出すのに困っていた時に、レスポンス良く代替案を提示していただいたことに助けられました」(佐野氏)

佐野氏の写真
並木氏の写真

また、並木氏も「実装したい内容をうまくシステムの言葉に表現できない際も、その内容を汲み取っていただき、提案してもらえたので非常に助かりました」と賛同しています。

3事務からのスモールスタート

ワンスオンリー申請システムの稼働は、3つの事務を対象にスモールスタートしました。ワンスオンリーの原則に則ったシステムということで、対象となる手続は、以前の申請内容をもとに新たな申請を行うものや、定期的に行われる反復性の高い申請が選ばれました。
スモールスタートを選んだ理由について森田氏は「県民の利便性向上を確認しながら、適した手続を見極めるためです。行政・デジタル推進課としても、拡大していくにはどのような手続がより適しているのかを、しっかり見ながらやっていきたいという考えがありました」と説明します。

■ デジタル完結による利便性向上

さらに、今回のオンライン申請システムは”デジタル完結”を特徴としており、事前相談から申請受付、審査、決裁、通知までを一貫してデジタルで行える点が利用者の利便性向上と職員の負担軽減に貢献しています。
福田氏は「今回、事前相談機能も実装しました。事前相談から申請を受け、審査、内部決裁、通知、利用者が通知書をpdfでダウンロードできるところまで、デジタルで完結することをシステム要件としています。これまでもオンライン申請の仕組はあったのですが、申請の入口段階は電子で受けるものの、審査を行っていく上で相手方への確認を電話でしたり、通知を送る場面で職員が異なるワードファイルで作成した通知をメールで送信したり、受け付けたシステムとは別の管理をする必要がありました。申請内容をもとに自動的に通知が作成されるデジタル完結という点が、特徴的な要素だと思っています」と述べています。

ワンスオンリー申請システムの利用者の95%が満足と評価

埼玉県庁では、スモールスタートを選んだ理由にも挙げた利用者の利便性を確実に把握するためにアンケート調査を実施しました。アンケート結果によれば、全体の満足度に関する設問では、回答者の95%が「満足した」と答え、その有益性が確認されました。他の設問に関しても、全体的にポジティブな回答が多く見られました。

しかし、埼玉県はこのアンケート結果に満足せず、まだ改善の余地があると捉え、さらなる使いやすさと申請率の向上を目指しています。

今後の計画:オンライン申請率の向上・拡大、内製化を視野に入れた取組へ

今後の計画としてまずオンライン申請率の向上を目指し、その後、他の手続にも展開していきたいと福田氏はいいます。そのためのポイントに内製化を挙げています。

「拡大していくためには、どうしても一定の費用がかかります。そのため内製化を考えています。ある程度ノーコードで職員自身が手続を作成できるカミレスやSalesforceの良さを活かし運用できるようになるために、ウフルさんによるハンズオン研修にも取り組んでいます」(福田氏)

椎名氏の写真

「内製化することで、私たちがノウハウを蓄積し、原課の担当職員にそれを伝え、職員自身が自分で取り組めるDXにまで発展できたら素晴らしいと考えています」と椎名氏も語ります。

さらに、森田氏はこう語ります。「手続をデジタル化していくということはもちろん必要なことですが、その前提として県民サービスをより良くするためにはどうするかということが重要です。庁舎に来なくても誰でも簡単に申請ができるようにする、申請されたデータがさらに次の県民サービスへ繋がっていく、こういった県民の利便性を向上させていくことも含めたデジタル化、これが現在、県が目指しているDXだと思います。そのためには、サービス改善が行いやすく、柔軟で安全性の高いデータの運用が可能な基盤サービスの選択が重要です。その実現手段としてSalesforceは最適解の一つだと思っています。今後も、Salesforceが住民のための基盤サービスとして発展していくものと期待しています」

* 本内容は2024年7月時点での取材内容に基づきます。


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