断水で混乱する被災地を「応急給水ポータル」で復旧支援

地震や台風、豪雨や大寒波などの自然災害によって起こる断水被害は、数週間にわたり住民の日常生活（炊事・入浴・トイレの水洗など）を直撃します。

断水時、住民のライフラインとなるのが各自治体が開設する応急給水所です。断水が発生すると各自治体は公共施設に給水所を開設し、その位置を自治体のホームページ上で告知、同時に給水に関する問い合わせ窓口を設置するなどして復旧に取り組みます。

しかし実際に災害が発生すると、被災した住民が限られた応急給水所に集中し、水をもらうため行列に長時間待つ、並んでいる間に水がなくなるなどの混乱が起き、それに伴い自治体の窓口に問い合わせが殺到するというケースがあります。

この課題を解決するため、ウフルは断水発生時の給水所の場所や混雑状況等を地図上で可視化するサービス「応急給水ポータル」を開発しました。自社開発のサービス基盤と情報ポータルマップ「elcompath（エルコンパス）」を活用し、地域住民はもちろん自治体職員も含め誰もが操作・利用しやすい解決策を実現しました。

■ 和歌山の断水被害を受けて生まれた「応急給水ポータル」

「応急給水ポータル」は2021年10月に和歌山市で発生した水管橋の崩落による紀の川以北地域の約 6 万世帯（約 13 万 8 千人）の断水被害をきっかけに開発しました。和歌山県が誘致した IT 企業の1社であり、和歌山県白浜町にオフィスを構えるウフルは、当時和歌山市職員と市民が給水に関する情報を共有できる仕組みの整備に困惑している状況を目の当たりにしました。

■ 職員も住民も 誰もが利用しやすいサービスを開発

「応急給水ポータル」は、地図上のピンにポインターを合わせると給水所の駐車場の有無や、給水残量、現場の混雑状況や次回給水車が来るタイミングが表示されるようになっています。給水状況が可視化されるため、自治体職員の業務改善につながり、給水所との連携が取りやすくなった他、地域住民に対する給水所の混雑によるストレスを軽減することができました。和歌山市では５日間で 6.3 万以上のページ閲覧数があり、たくさんの方にご利用いただきました。

和歌山市職員側からは「混雑状況の更新が簡単で、他の給水所の混雑状況が見えるので、市民に給水所の案内ができた。」と評価いただき、住民の中には実際に「ポータルを見て給水所に来ました。」という方や、SNSで「混雑状況等、情報が多くてとても便利。今後の災害にも備えて改良を続けてほしい。」などの投稿もあり、自治体職員と地域住民のどちらからも評価をいただきました。

■ 平時からの連携があったからこそ迅速な対応が可能に
ウフルは和歌山市との本ケースにおいて、48 時間という短時間で「応急給水ポータル」を開発しました。ウフルと和歌山市は本事案発生以前からスマートシティ実現に向けて同社と連携を行ってきた経緯があり、こういった緊急事案が発生した際も予め準備されていた同社のサービス連携基盤を活用したことによって、迅速なサービスの立ち上げを可能にしました。このような官民のオープンイノベーションが平時から実現されていたことが、緊急時に迅速に対応できる重要な要素となりました。

■ 全国自治体のうち給水状況把握・情報発信対応はわずか4％

調査概要
調査対象　：全国28都道府県 地方自治体の水道・
危機管理関連部署ご担当者様
調査時期　：2022年12月19日～12月28日
サンプル数：200自治体
調査方法　：電話アンケート

和歌山市の被害を含め直近の各地での断水被害を踏まえると、平時からの給水スポットの状況のリアルタイム把握や、それに連動した地域住民に対する情報発信の仕組み作りが災害時の住民の生活をサポートするうえで非常に重要と言えます。

今回ウフルが全国200自治体を対象に行った調査によると、給水スポットの状況把握や情報発信は全体の4%しか対応できておらず、未対応の自治体の課題として「情報伝達速度」が最も多いことがわかりました。また、非常時での住民への情報発信におけるSNSやSMSの活用状況については、39%の自治体が対応できておらず、広報車等による巡回告知が主な手段であることもわかりました。

■ ウフルの防災サービスの今後
ウフルは、河川の水位や避難所情報等も掲載した防災ポータルや、地域の飲食店等と連携した地域活性ポータル等を開発し、平時と災害時の両方の観点から自治体のサポートを行っています。より多くの自治体、地域住民の生活をサポートすることで持続可能な社会の実現を目指していきます。

自治体概要

和歌山市

和歌山市七番丁23番地