SMOOTH WORLD project in SARABETSU(更別村×ウフル対談)

永続性のあるデジタル化で、持続性のある村の自治を実現
~<対談>更別村×ウフル 更別スーパービレッジ構想の取り組み~

更別スーパービレッジ構想(デジタル田園都市国家構想)に取り組む、北海道・更別村。ウフルは、この取り組みに協力しています。スーパービレッジ構想に至る背景や更別村・ウフルとの出会い、永続的なデジタルの取り組みについて、スーパービレッジ推進室長 企画政策課参事の今野雅裕さん、ウフルの 取締役常務執行役員 坂本尚也が語りました。


更別村
スーパービレッジ推進室長 企画政策課 参事

今野 雅裕

株式会社ウフル
取締役常務執行役員

坂本 尚也

更別村について
北海道・十勝地方の中南部に位置する更別村は、日本の食料基地とも呼ばれる北海道でも代表的な畑作農業地帯です。村の人口はおよそ3000人強。更別村でまかなえる食料は22万人の一年分、村の農業を守ることは日本の食を守ることにつながります。そのため、村では産業振興や福祉、村人が生活しやすい環境づくりに注力。現在の西山 猛村長による村政になってからは、子育て政策にも力を入れているといいます。

今そんな更別村が注目を集めているのが、デジタル田園都市国家構想事業に採択された更別スーパービレッジ構想の推進です。村人、特に年々増加する高齢者が生活しやすい環境づくりを目指して始めた取り組みです。
持続可能な村の実現に向け「100歳になってもワクワク働けてしまう奇跡の農村」、「じいちゃんばあちゃんQOL(生活の質)日本一の村」を掲げ、様々な取り組みに挑戦し続けています。


更別村との出会い。「村の将来の絵に共感してもらえると感じた」

更別村とウフルとの出会いは、更別村が職員向けに毎月定期的に開催しているIT知識向上のためのランチミーティングでした。

坂本 「初めましてはリモート越しでしたね。各企業の紹介時間があり、そのときにウフルの事業領域について説明し、その後割とすぐに更別村へ伺いました」

ウフルに出会う以前、今野さんはSalesforceに関心を抱いていたといいます。

今野 「農水省のDX担当者から、ノーコードで職員がシステムを作れると聞いて気になっていたんです。やはり内製できたほうがコストを抑えられますから、魅力的なシステムだなと。そのタイミングで、たまたま『Salesforceをやっています』というウフルさんが現れた」

坂本 「良いタイミングだったんですね」

今野 「ちょっと話を聞けば『じゃあ』とすぐに動ける印象がありました。大手ベンダーやSIerとは違う印象も受けましたね。我々は行政として村の将来をどうしていくかという目的があるわけですが、そこの将来的な絵に共感していただける人たちだなと」

坂本 「ウフルが大切だと思っているのは、取り組みの永続性です。今野さんがおっしゃるように、地域にはその地域ならではの課題や取り組みがあります。外から来た企業がそこに取り組もうとすると反感を抱かれることもあると思うんですよね。ウフルはそうならないように、地域の方々と上手く連携したり住み分けたりしながら、良い体制を作るよう意識しています。」


 
デジタル化の永続的な取り組には、地域の人にリアルな場で話を聞いくことが重要

デジタルは放っておいても普及する。村の実情にあっていれば。

坂本 「今野さんは5年以上、更別村で取り組まれてきて、永続性という観点で何か重視されていることはありますか?」

今野 「普及させることですね。そのために必要なことは、地域住民に寄り添い、いいものを提供することでしょう。いいものであれば、デジタルは放っておいても普及するんです。
ただ、いくらデジタルに長けているSIerであっても、村の内情を知らない外から来ただけの方の場合は、解決できるものを作れないと思っています。東京の大手SIerが村に実証実験に来たこともあったのですが、ただやって帰るだけでは、知的財産が村に何も残らない。村民を巻き込んで作っていないので、普及していくモノも残らない。
繰り返しになりますが、村の実情に合ったデジタルは勝手に普及します。デジタル化の永続的な取り組みのためには、村に入り込んでもらい、地域の人にリアルな場で話を聞いて作っていくことが重要なのです。
ちなみに、私は取り組み開始当初、村民の声を聞きにバス停に向かいました。バスを待っている人に『困りごとはないですか?』『買い物はどこに行っているんですか?』『今、何が心配ですか?』と聞いて回り、内容別に課題を分けていったんです」

坂本 「私は東京在住ですが、東京の人は比較的よく歩くらしいんです。」

今野 「僕も東京では、良く歩きましたね。笑」

坂本 「そうですよね。それが所変われば、徒歩5分10分の距離でも車移動を選ぶなど、その地域に入り込まなければ気づけない思い込みが確かにあります。この感覚がズレていると、何の解決にもならない的外れなデジタル化を推進してしまうおそれがあります。
当然のことながら、すべてをその地域事情にあわせて個別に作り込むことはコスト面で現実的ではありません。共通化できる部分も多くありますので、外から見た目線で共通化されたものを選ぶ部分と、個別に最適化させたほうが良い部分とのバランスを考えることもデジタルの永続性を考える上で重要な要素でしょう。最終的には、そのバランスを取ってどうオリジナルなものにしていくかが大事だと思っています。」

今野 「デジタルは導入時にコストがかかると理解しておく必要がありますね。ただ、人的コストはデジタル化が上手くいけば下がっていきます。また、デジタルが定型的な仕事を代替してくれることで、人はクリエイティブな仕事に注力できるようになるでしょう。
先ほど共通化と個別最適化のお話をいただきましたが、行政DXでは、特にそこのすり合わせが必要だと思います。どこまで個別化を求めるのかの調整をしておかなければ、本当にかなりのコストがかかりますからね。
コストを考えると、大規模な自治体より更別村のような人口数千人規模の自治体のほうがパフォーマンスが良いと思います。現在、更別村では云億円のコストをかけています。
仮に10万人規模の自治体で同じコストをかけても普及率が1%のぐらいとすると、更別村では80%にはなるでしょう。なぜなら過疎地だからこそ、まだまだ行政がやるべき準公共サービスの余地があるからです。どちらのほうがコスパがいいですか?という話ですね。
ですから、私は更別村をテストフィールドとして使って、ショーケースとなり得るものを作りましょうとお話しているのです。ウフルさんには、ぜひともそのあたりでお力を貸していただきたいなと思っています」

坂本 「村民の方に寄り添い、かつ役場の方たちにとっても使いやすいものを作りたいです。やはり使う側だけではなく運用する側にとっても使いやすいことが大事だと思っています。あとは実際に利用してもらうことですね。便利になることを実感してもらえると、デジタル化に無関心な層の意識が変わっていき、自律的に発展しやすい環境ができていく。そこをお手伝いしたいと考えています」

更別スーパービレッジ構想に至るまで

更別村のスーパービレッジ構想のきっかけは、地方創生をどのようにしていけばよいのかという今野さんの課題意識でした。印象的なエピソードとして、今野さんは十勝出身の人とのやり取りを振り返ります。

今野 「帯広のとあるお店で会った人だったのですが、更別村を知らなかったんですね。また、とあるサイトにある市町村の知名度ランキングで、更別村が北海道179市町村中182位だったという出来事もありました。北方四島も合わせて183中の182位です。
こんな状態で更別村に人が来るわけがありませんし、企業誘致が進むわけがない。そこで何かフックになるものはないかと考えました。そんなあるとき、たまたま農業研究所の所長さんと話す機会があり、困りごとはないか尋ねると、『実は、通信環境の関係で海外製の機械を入れたいけれど、規制の影響で入れられない。何かいい方法はある?』と返ってきました。そこで取り組み始めたのが、スーパーシティの前身となる国家戦略特区への申請です」

今野 「先ほどお話したバス停などでの村民ヒアリングを経て、スーパーシティ構想に提案したものの、惜しいところで採択を逃しました。そうすると、今度はデジタル田園都市構想が始まりました。更別村にふさわしい『田園』ですから、次こそはということで動き始めました。その間、産業系の実証実験もずっと続けてきました。村民のQOL、幸福度に注目して考え続けてきましたね」

デジタルは村を持続させるための手段

最後に、更別村自体の持続性についてお聞きしました。

今野 「行政は、村民の方が”1000人規模の村でいい”と言えば1000人規模の村を目指します。ただ、現実には、その規模で村の行政を維持することはできません。じゃあ、どこを目指せばいいのですかという話です。
コロナ禍により離農者が増えたことで、脆弱性があらためて可視化されましたし、社会情勢の変化により資材が高騰している事実もある。こうした変化に耐える自治でなければ村がもたない。デジタルは村を持続させるための手段であり、目的は雇用や移住者を増やして足元を固めること。そうしてしっかり地に着いた政策をやっていくことが、村の持続性かなと思っています。
ちなみにウフルさんは、なぜ更別村を取り組み相手に選んだのかをお聞きしたいです」

坂本 「トーン、テンポが合うといったところでしょうか。弊社も変化していくので、課題を見つけて取り組むまでのスピード感が合うことは非常に大切なのです。やりたいことがたくさんあるなかで、更別村は『ここからいこう』と優先順位を付けてくださるので非常にやりやすさを感じています。これからも、村民の方がどれだけ楽しめるのか、満足できるのかを重視した仕組みづくりと、そこからどう継続的に改善させていくのかのお手伝いを、できる限り一緒にやらせていただきたいと思っています」


■ ウフルの提供サービス
更別村は、『更別村SUPER VIRRAGE構想』事業として、最先端のデジタル技術を活用し、高齢者が100歳世代まで生きがいを持って楽しく過ごせるための、「ひゃくワクサービス」を住民へ提供しています。
ひゃくワクサービスでは、「趣味系サービス」「健康系サービス」「医療系サービス」の3つの基本サービスとそれを支えるコミュニティナースのサービスを提供。このサービスを支える場として、デジタル公民館を整備し、行政サービスや交流の場や、移動サービスなどの各種予約をオンラインで実施できるサービスを提供するとともに、これらの基盤を活用したスマート農業の実現を図り、暮らしと仕事の両面から、日本で最もシニアが元気に輝く農村の実現を目指しています。

この事業においてウフルは、「行政手続の電子申請」「住民ポータルサイト」の実装で参画しています。
自社サービスのCUCON(キューコン)とSalesforceを利用し構築、住民ポータルとバックエンドシステムを連携し、パーソナルデータとポータルサイトからの申請者・内容のシームレスな連携を実現しています。

■ 「CUCON(キューコン)」について
「CUCON」は、企業やITサービスのデータをつなぎ、自由に活用するための連携プラットフォームです。企業や社会が抱える課題の解決に向け、分野ごとに分散したデータやサービスを集約・分析・共有することで、高度な先端サービス(orより良いサービス)の提供を可能にします。難しいプログラミング技術を必要としないローコード開発によって、機能を追加できる拡張性が特長です。これにより、サービス提供者は、顧客や住民などのユーザーとのコミュニケーションを中心に、利用者の視点に立ったサービスの最適化を図ることができます。
CUCONは、世の中のサービスとデータを最大限に活用し、企業や社会の無理や無駄をなくすことで持続可能な世の中の実現を目指します。

「CUCON」は、AWSのクラウドサービスであるウェブサービス、 Amazon Elastic Kubernetes Service、Amazon Cognito、Amazon Relational Database Service、Amazon CloudFront、Amazon Simple Storage Serviceなどを利用しています。


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