AIを主語にしない。その先にある「企業のありたい姿」から考える
AI導入は本当に企業を変えるのか。それとも、私たちはまだ「便利なツール」を手に入れただけなのか。
生成AIブームから、もう4年が経ちました。多くの企業がAIを導入しました。社内でも使われるようになりました。資料作成、要約、調査、開発支援。たしかに便利です。
でも一方で、こんな声も聞こえてきます。
「思ったほど成果が出ていない」
「現場では使っているけれど、会社として変わった感じはしない」
「結局、一部の人だけが使っている」
なぜなのか。
今回は、ウフル事業責任者の坂本に、AI時代に企業が本当に向き合うべき課題について聞きました。
「AI導入そのものはゴールではない」と語るウフルの事業責任者・坂本。
01 / Evolution & BottleneckAIはここまで進化した。では、なぜ成果が出ないのか?
AIそのものは、かなり進化しています。
去年までは、まだ「AIは信用できるのか」「ハルシネーションは大丈夫なのか」という話が中心でした。
でも、そこはかなり改善されてきていると思います。
実際、開発の領域では、AIが使われる割合はどんどん増えています。
営業や資料作成のような領域でも、個人レベルではかなり浸透しています。
便利です。
本当に便利になりました。
ただ、それはあくまで「個人が便利ツールとして使っている」状態なんですよね。
ここが大事です。
個人がAIを使うことと、組織としてAIを使うことは、まったく別の話です。
例えば営業で考えてみます。
アカウントプランを作る。
商談を整理する。
提案書を作る。
次のアクションを決める。
その一連の業務プロセスの中に、AIが自然に組み込まれている。
しかも、誰が使っても、一定の品質で同じような成果が出る。
そこまでいって、初めて「組織としてAIを使えている」と言えると思います。
でも、正直に言うと、そこまで到達できている企業は、まだ多くありません。
AIは使われている。
でも、組織の力にはなりきっていない。
今、多くの企業がいるのは、たぶんそのあたりです。
02 / System & ProcessAIは業務を映す鏡になる
では、なぜAIを組織で使えるようにならないのか。
理由はかなりシンプルです。
業務プロセスとデータが整っていないからです。
例えば営業には、営業の業務プロセスがあります。
どのタイミングで、どんなデータを使うのか。
その結果として、何をアウトプットするのか。
そのアウトプットが、次の業務のインプットになるのか。
この流れが整理されていないと、AIは組み込めません。
なんとなく商談を進める。
なんとなく提案書を作る。
なんとなく次のアクションを決める。
人間だけでやっている時は、それでも回ってしまうことがあります。
属人的な勘や経験で、なんとかできてしまう。
でも、AIはそこを曖昧なままでは扱えません。
さらに言うと、データも同じです。
提案書が共有フォルダのどこにあるのか分からない。
最新版がどれなのか分からない。
顧客情報が複数の場所に散らばっている。
過去の商談履歴も、担当者の頭の中にしかない。
その状態でAIに「判断して」と言っても、無理があります。
人間でも迷うものを、AIが正しく判断できるわけがない。
だから最近よく言うAI Readinessというのは、単に「AIを入れる準備」ではありません。
業務とデータを、AIが使いやすい状態に整えること。
もっと言えば、企業自身が、自分たちの業務の流れとデータの持ち方を見直すことです。
AIで成果が出ない。
そう聞くと、AIの性能の問題に見えます。
でも実は、AIの課題ではないのかもしれない。
企業自身の業務やデータの課題が、AIによって浮き彫りになっているだけなのかもしれません。
AIは、企業の業務を映す鏡なんです。
03 / Implementation Strategy大きく考え、小さく始める
AI導入で本当にROIを出そうとするなら、チーム単位や部署単位だけでは限界があります。
会社を上げて、全社で取り組まないといけない。
これはかなり重要です。
ただし。
最初から全部やろうとすると、だいたいうまくいきません。
全社AI化。
全業務にAI導入。
全データを統合。
言葉としては正しいです。
でも、いきなりやるには大きすぎる。
だから、最初は小さく始めればいいと思っています。
例えば、まずは案件フォルダだけを対象にする。
営業の一部プロセスだけを対象にする。
提案書作成の前段だけを対象にする。
その範囲で成果を出す。
使ってみる。
失敗もする。
そして、「どうすればAIが業務に定着するのか」を学んでいく。
ウフルでは昔から、「クイック&スケール」という考え方を大事にしています。
最終的には、全社でAIを活用できる状態を目指す。
でも、最初からスケールさせようとしても無理です。
まずはクイックに始める。
小さな成功体験を積み重ねる。
営業で成功したら、その知見を別の業務へ展開する。
別の部門へ広げる。
そして、徐々にスケールさせていく。
AI導入も、結局はプロジェクトです。
一発で完成するものではありません。
一度入れたら終わり、でもありません。
小さく始めて、学びながら広げていく。
遠回りに見えて、たぶんそれが一番確実です。
「AIは単なる便利なツールではなく、人の行動や価値観、社会の仕組みにまで影響を与える可能性があります」
長年にわたり多様なSaaS導入を支援してきたからこそ、顧客の「伴走者」であることの価値を理解している。
04 / Partnership & ValueAI時代だからこそ、伴走の価値が問われる
AIの話になると、何かまったく新しいことが始まったように見えるかもしれません。
でも、私は本質的には、そこまで変わっていないと思っています。
ウフルはこれまで、SalesforceをはじめとするSaaS導入支援を長年やってきました。
その時から大事にしてきたことがあります。
導入することではなく、成果を出すこと。
ここです。
SaaSも、導入しただけでは意味がありません。
アカウントを発行しただけでは、何も変わりません。
画面ができただけでも、まだ足りません。
現場で使われる。
使い続けてもらう。
業務が変わる。
成果につながる。
そこまでいって、初めて価値になります。
だから私たちは、導入後もずっと伴走支援をしてきました。
AIの時代になっても、考え方は同じです。
違うのは、AIのほうが、できることの幅が圧倒的に広いということです。
SaaSは、ある程度、業務の型が見えていました。
でもAIは、もっと広い。
業務の一部を支援するだけではなく、判断や提案、次のアクションづくりにも関わってきます。
業務理解。
データ活用。
AI技術。
現場への定着。
経営目的との接続。
このあたりを全部つなげて考えないといけない。
SaaSと同じように、AIも「導入する時代」から「成果を出す時代」へ変わっていきます。
そしてそれと同時に、伴走支援に求められる役割も変わってきていると思います。
05 / The Core PhilosophyAIを主語にしない
AIを導入する時に、忘れてはいけないことがあります。
それは、AIを主語にしないことです。
企業の方と話していると、どうしてもこういう話になりがちです。
「AIで何ができますか」
「どのAIツールを入れればいいですか」
「生成AIで何かできませんか」
もちろん、その問いも必要です。
でも、本当に重要なのはそこではありません。
何を実現したいのか。
どんな会社になりたいのか。
何を変えたいのか。
そこが先にあるべきです。
AIはいろいろなことができます。
本当に、いろいろできます。
だからこそ、気を抜くと「あれもやろう、これもやろう」となります。
でも、ゴールが曖昧なままだと、結局成果は出ません。
売上を伸ばしたいのか。
社員が働きやすい会社にしたいのか。
顧客体験を変えたいのか。
新しい事業を作りたいのか。
意思決定のスピードを上げたいのか。
その上位の目的があって、初めてAIの使い方が決まります。
AIをどう使うか、ではない。
企業として、どこへ向かいたいのか。
そのために、AIをどう使うのか。
順番を間違えてはいけないと思っています。
06 / Beyond Convenience「便利になった」の、その先へ
もちろん、AIは業務を効率化するための技術です。
資料作成が早くなる。
調査が楽になる。
議事録が自動でまとまる。
開発のスピードが上がる。
それだけでも十分に価値があります。
でも、そこで終わる話ではないと思っています。
例えば将来的には、個人のパーソナルエージェントが、企業のエージェントと会話して買い物をする世界が来るかもしれません。
そうなると、今のCRMのあり方も変わるでしょう。
個人に向けた広告の意味も変わるかもしれません。
会社に所属して働く、という働き方そのものも変わるかもしれません。
AIは、単なる便利なツールではありません。
人の行動に影響を与える。
価値観に影響を与える。
社会の仕組みにまで影響を与える。
その可能性があります。
だから、私自身もまだ答えを持っているわけではありません。
ただ、ひとつだけ思うことがあります。
「便利になったね」で終わる話ではない。
AIを入れるかどうか。
どのツールを使うか。
どの業務を効率化するか。
もちろん、それも大事です。
でも、その先にあるはずなんです。
企業はどう変わるのか。
働き方はどう変わるのか。
顧客との関係はどう変わるのか。
人は、何に時間を使うようになるのか。
これから、さまざまな有識者の方々と対話しながら、その先の未来を考えていきたいです。
AIを主語にしない。
その先にある、企業のありたい姿から考える。
たぶん、そこから始めるべきなんだと思います。
不定期での更新となりますが、AIのその先にある未来についてさまざまな有識者の方々をお招きし、対話しながらこれからの「企業のありたい姿」を、今後お届けしていきたいと思います。どうぞご期待ください。
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