IoTパートナーコミュニティフォーラム 2017 開催レポート(3)
IoTパートナーコミュニティフォーラム、午後からのプログラムでは、Aホール、Bホールの2部屋に分かれ、Season-3にあたる今ターム(2017年7月〜2017年12月)での活動成果を報告するとともに、Season-4 (2018年1月〜6月) の活動計画が共有されました。合間には協賛企業からの発表もありました。
今回は、Aホールで行われた各WGの活動報告についてレポートします。
- IoTパートナーコミュニティフォーラム 2017 開催レポート(1)
- IoTパートナーコミュニティフォーラム 2017 開催レポート(2)
- IoTパートナーコミュニティフォーラム 2017 開催レポート(4)
事故につながるヒヤリハットの予測アシスト提案
IoT×AI WGは、データをどのように集め、貯め、意味づけし、見える化するかというIoTのデータ活用のステップの中で、意味づけと見える化が重要だと認識しています。この意味づけ部分にどの技術を適用すればよいのか、それがこのWG発足の出発点でした。今シーズンはデータ解析をテーマとした物流コンテストへの挑戦や、パートナーコミュニティ向けにBIを利用したハンズオンセミナーを実施しました。
発表では前シーズンまでの成果として、飲食店のメニュー提案や駐車場やトイレの空き率予測を振り返りました。今シーズンは「大和ハウス次世代ロジスティクスオープンデータ活用コンテスト」へ参加しました。ドライバーの居眠り運転や出会い頭等のヒヤリハットを未然に防ぐためのサポート提案として、音声コミュニケーションを利用した警告・情報提供を行い、重大事故を減少させるヒヤリハット予測アシストを提案しました。
これまでリアルタイムの生体情報や走行情報をインプットデータとし、眠気や車体の揺れを検知、警告音等をアウトプットする仕組みはありました。今回のWGでの取り組みは、蓄積した運転情報データを分析し、ヒヤリハットにつながる予兆を見極め、休憩アシストや交通情報等を提供するものです。運転中目が離せないドライバーのために音声認識(Alexa)を活用しており、デモ動画を紹介。
将来的にはデータ流通により大量のデータを活用することにより、個人差や時間帯、天候といったリアルタイムの情報も利用でき精度が上がると同時に、自動運転車両への連携等が期待できます。課題として、機械学習に利用するヒヤリハットデータが少ないことや、特徴量の設定・前処理に時間がかかるなど、気づきがあったとのこと。来シーズンは「画像解析」技術を軸に、デバイスや技術を比較し、AI・機械学習を利用したソリューションを提案予定です。(発表者:ウイングアーク1st株式会社 武市真拓氏)
サステナブルエコノミープラットフォーム“Connected Key”を発表
ブロックチェーンWGは、今シーズンまでの活動のゴールとして「サステナブルエコノミープラットフォーム」コンセプトを発表しました。
はじめに、前シーズンにプレスリリースとともに発表した、世界初の試みである「本人のみ受け取り可能な宅配ボックス」を振り返るとともに、ブロックチェーンのオープンな分散データベースで改ざんしにくい点、公開鍵認証で本人認証が簡単な点、取引において第三者を立てる必要がない点から、「従来のシステムより低コストで安定したシステムが構築可能」という特性をおさらいしました。今シーズンはこの特性を活かしたシェアリングエコノミーへの展開を、ハウスシェア、カーシェア、自転車シェアのユースケースで検証しています。
実際にブロックチェーン「南京錠」のデモや「シェアリングセグウェイ」のデモ動画を紹介。これらの仕組みは”Connected Key”と名付けた共通プラットフォーム上に構築されています。”Connected Key”はIoTによる鍵の開閉、電源ON/OFFのコントロールと、デジタル化した鍵の受け渡し・共有をDLTを用いて安心・安全に実現するという2つの特徴を持っており、このブロックチェーンプラットフォームを共有することで、サステナビリティと高いセキュリティを容易に実現できると期待されています。
最後に、ブロックチェーン基盤「Z.com Cloudブロックチェーン」をシーズン1の宅配ボックスを例に紹介。仮想通貨イーサリアムを利用してブロックチェーン上に分散型アプリケーションを開発できるPaaS型サービスとなっています。 (発表者:GMOグローバルサイン株式会社 乾泰行氏、株式会社セゾン情報システムズ 清水健一氏、GMOインターネット株式会社 内山氏)
オフィスでの実験によって明らかになったセンサー設置場所や起動タイミング
オフィスIoT WGは今シーズンにスタートした新しいWGとなります。今シーズンは実証実験およびIoTショールームの構築と、ソリューションガイドの作成を方針として活動してきました。まずは、ウフルで実施した実証実験として、ビーコンによる社員の位置情報把握、環境センシングによる会議室の在室把握、温湿度・CO2濃度のモニタリング等、オフィスにおけるIoTソリューションの活用事例を紹介しました。また「総務Pepper」と人感センサー、マットセンサー等各社の製品を連携させたソリューションを紹介。Pepperの利用状況やアンケート結果、稼働状況を可視化し、必要な時に必要な情報を提供するためには起動間隔や人感センサー等の設置場所の調整がポイントとなることが分かりました。
来シーズンはウフル以外のオフィスでのテストベッドを実施するとともに、ソリューションをパッケージ化し販売してゆくことを目標として活動します。具体的には3グループにわけ、さらなるテストベッド進めるグループ、多種存在する屋内位置情報ソリューションを検証し特徴をまとめる研究会、設備全般のプロトコルを検証する研究会として活動を行います。ソリューションガイド作成についても、カタログのみならず各社のノウハウのコラム化、適用事例集を作成することを活動目標にしています。最後に今シーズン作成した各社のソリューションガイドを発表し、報告としました。(発表者:株式会社ウフル 松浦真弓、M-SOLUTIONS株式会社 植草学氏)
電子秤による薬の減量検知で服薬アドヒアランスを確認
ヘルスケアWGはシーズン1から一貫して、「見守り」という手段ではなく「介護予防・健康寿命延伸」を目標に掲げて活動しています。医療と介護の改革は国の政策となっており、この流れに寄り添う活動を行いたいと考えています。シーズン1では活動量計Fitbitを利用して日中の活動量を定量化し、モチベーション向上や健康増進アドバイスに活用する取り組みを行いました。前・今シーズンは介護の現場が施設から自宅へ移行している社会背景から介護予防が最重要と考え、健康寿命を延ばすための根拠のある服薬アドバイスの実現を目指します。
実際に医療費の中でも調剤費用は18%を占め、飲み残しは大きな問題となっています。前・今シーズンは服薬アドヒアランスを確認する手法として、電子秤による薬の減量検知を実現する試作機を作り、大手調剤薬局へのヒアリングを行いました。Z-Worksは人感センサーを利用した活動量のモニタリングの仕組みをもっており、来シーズンはこれをヘルスケアプラットフォームとして、生活リズム通知、生活改善策提案を調剤薬局へ提案することを考えています。また、このプラットフォームを通じてPHR(Personal Health Records)の活用やデータ流通を視野に入れており、データ活用による地域包括ケアシステム・遠隔診療のPoC構築、テストベッドを来期以降の活動案としています。(発表者:株式会社Z-Works 小川誠氏)
巡回物件と常駐物件のIoTを活用したスマートな設備点検業務の効率化
今期のスマートメンテナンスWGは、IoTを活用したビル管理のスマート化に取り組みました。巡回物件の状況を遠隔で把握することにより、常駐物件と同レベルの品質提供を実現すること、また常駐物件管理の点検負担を減らし、より多くの物件管理を可能にすることが目標です。
巡回物件の現場ではセンサーデータを分析し予兆予知保全を実現する一方、そのデータをサーバーへ集約させます。常駐物件ではモバイル端末を介してセンサーデータをサーバーへ送り報告書作成を行うと同時に、サーバーからは巡回物件分も含めた予防予知や報告指示を受け取ります。同一のサーバーを利用することで、巡回物件の遠隔監視を可能にし、またより多くのデータを集められることから予防予知保全の精度が高まると考えます。
今シーズンの活動では、この全体像のうち、巡回物件のセンシングと機械学習による異常予兆検知の有効性の検証、および常駐物件のモバイルとBIツール活用による業務効率化の検証を行いました。業務効率化は、アプリ開発基盤PlatioとBIダッシュボードMotionBoardを利用し実現しました。報告書へのカメラで撮影した写真・動画の添付や、センサーデータの自動入力が可能で、簡単に報告データのデジタル化が実現しました。また、BIダッシュボード上で、データの確認・修正、従来フォーマットでのレポート出力、ビルの可視化が可能となりました。
異常予兆検知はシーズン1でも取り組みましたが、真に現場で役立つ取り組みをと再考し、今シーズンは故障時に大きなクレームにつながる空調設備の故障予測に取り組みました。空調モーターにセンサーを取り付け、まずは正常状態を学習し、異常状態にある空調モーターの異常度合をスコア値として判別できました。今後はデータ蓄積と学習により、値に応じたアクションをとることが可能になると考えます。また、巡回物件のセンシング予兆検知および常駐物件のモバイル活用スマート化の連携を目標とし、現場へ気づきのフィードバックや、メンテナンス計画への反映、予備在庫の最適化を提案していきたいと考えています。(発表者:インフォテリア株式会社 吉谷恒一氏、沖電気工業株式会社 津田雅彦氏)
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