IoTパートナーコミュニティフォーラム 2017 開催レポート(4)

IoTパートナーコミュニティフォーラム、午後からのプログラムでは、Aホール、Bホールの2部屋に分かれ、Season-3にあたる今ターム(2017年7月〜2017年12月)での活動成果を報告するとともに、Season-4 (2018年1月〜6月) の活動計画が共有されました。合間には協賛企業からの発表もありました。

今回は、Bホールで行われた各WGの活動報告についてレポートします。

店舗のIoT化は現場のアクションにどう落とし込むかがカギ

流通WGは、シーズン1から一貫して、店頭での顧客アクションにつなげるための、オムニチャネル時代のIoT活用をテーマに活動してきました。センサー、通信、その他デバイスを組み合わせて、流通業界向けのPoCを構築してきました。シーズン1はオイシックスドット大地の食料品店舗へ環境センサーや人数カウンター、性別・年代識別センサー等を設置し、ネットとは異なりリアル店舗では把握が難しい属性情報を取得できる仕組みを実現しました。この実験を通して、既存店へのセンサー類の設置や安定した通信の確保など、技術的な課題が明らかになったとのこと。

続くシーズン2では新設の別店舗にて実験を行いました。可視化されたデータを、売上げにつなげる具体的アクションへどう落とし込むか、ここをクリアにしないと本格導入が難しいという課題が明確になりました。そして今シーズンは、小売業者に向けた、売上向上につながる施策の提案および検証のお願いをしました。しかし現場の理解を得るのが難しく、即効性を求める現場と長期的視点の経営層に意識の乖離があることがわかりました。IoT活用はより大きな視点での考えが必要となることから、来シーズンはサプライチェーン全体を俯瞰し、ものの流れのみならず、人の行動・意識を考慮した新しいソリューションの考察を目指します。(発表者:オプテックス株式会社 中村明彦氏)

配達日報のデジタル化と車両動態データの統合により見えること

物流WGは前シーズンの発足以来「物流に関わる人々の満足度向上」を目標に掲げ、今シーズンは配達日報のデジタル化と車両動態データとの統合を実施しました。当日の発表では、働き手が減る中で荷物の小口化、配送の多様化による手間が増加しているという物流業界を取り巻く環境をふまえ、改めて物流に関わる人々の課題を整理しました。なかでも、配送ドライバーには、長時間労働や納品先からの要望の多様化(クレームや再配達依頼)、配送ノウハウ(ルートや駐車スペース等)の伝承の難しさという課題があるとのこと。また荷物を受け取る人には、荷物を受け取るための時間的拘束や、タイミングが合わず荷物を受け取れないことが課題として挙げられました。WGでは、再配達問題として注目されているこれら2者の課題に注目し、両者が満足できる仕組みづくりを目指し、今回の実験を実施しました。

オイシックスドット大地の宅配の仕組みを利用した今回の実験では、配送車の動きをGPSを用いた既存のサービスで、配送ドライバーの動きと届け先の情報をモバイルアプリを用いてデジタル化しました。単独のソリューションだけでは解決できない課題を補完しあい、配送全体のデジタル化を実現しました。この結果、配送ドライバーの滞在時間は、マンションor戸建て、在宅or不在に影響を受けることが明確になりました。また実験を通して、データ取得間隔の調整や、自動でマージ・集計する仕組み、在・不在情報を扱うことからセキュリティにも十分に留意する必要があることが見えてきました。在・不在と解約率の分析など、いままで活用できなかったデータ利用や、ピンポイントでの事前配達予告など、精度向上の先にある活用の幅は広く、新たなメリットが見出せる事がわかりました。(発表者:株式会社日立物流 歸山翔平氏)

リスク対策としてのIoTセキュリティテストベッドとIoT保険

セキュリティWGでは、シーズン1から活動の一つとして、啓蒙の意図からセキュリティ事故の事例紹介を行っています。今回の発表の中でも、まずは事故事例を紹介し、多くのセキュリティリスクが潜む実情を共有しました。WGでは構成メンバー各社がもつソリューションを一つのネットワークにつなぎ、システムへの侵入、データの不正取得あるいは改変、システムの停止あるいは破壊といったセキュリティリスクを、実際に防ぎうるのか、調査検証が可能なテストベッドを作成します。各社のソリューション紹介とともに、組み合わせた際の実務的課題を整理しました。この取り組みは、平成29年度中小企業のIoT化支援事業公募型共同研究採択されているとのことです。続いてIoT保険への取り組みを発表しました。IoT保険はサイバーセキュリティ保険のひとつです。サイバー攻撃とは、完全には防ぎきることができず、どうしてもリスクが残るものであるとのこと。

残存リスクで発生しえた利益損失への対策はサイバーセキュリティ保険とPL保険の活用が有効です。WGで検討を重ね、保険をセキュリティ対策の一つとして位置づけ、IoTの機器やサービスに、保険をバンドルしてはどうかと提案しました。セキュリティリスクは現実的リスクであり、対策しないと大きな損失を招くものです。セキュリティ・バイ・デザインの考え方で、設計段階からセキュリティを組み込む必要があり、そのためには、当WGのIoTセキュリティベッドを利用し自社のソリューションを評価してもらうことで、残存の技術的セキュリティリスクはかなり防ぐことができると考えています。それでも100%のリスク回避はできないので保険で補う、つまりは99%の安全性でソリューションを市場に投入し評価を受けることができ、スピード感を獲得することができると発表を締めくくりました。シーズン4はテストベッドとIoT保険の実運用に入る予定で、活用を望む企業を募集しています。(発表者:株式会社ウフル 竹之下航洋、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社 古賀俊輝氏)

外食産業の活性化から見る「食」の課題解決、飲食店経営支援ソリューション

FoodTech WGでは社会問題を背景に「食」を取り巻く環境・課題を整理しました。これらをIoTで解決することを研究課題に活動しています。SNSには日々大量の食の写真がUPされていることから、食の向こうにはコミュニケーションがあると考え、食はコミュニケーションのツール、飲食店はそのプラットフォームと定義づけています。飲食店の構成要素はモノ・コト・業務の3つであり、コトと業務は店舗内の局所最適によって、モノ(食材)は第1次から消費者まで全体最適によって改善できると考えました。シーズン2までは繁盛店をつくる仕組みづくりを考え、おもてなしプラットフォームとして、顧客の視点に立ったコミュニケーション支援と、経営視点に立った経営・業務効率化の2本立てで、後者から実験に着手しています。

具体的には極鶏.Barというリアル店舗で、店員に気づきを与え次のアクションを促すためのダッシュボードを作りました。未会計の注文を含めた売り上げが把握でき、売上目標に対する達成率とともに表示され、テーブルごとの構成に合わせた想定売り上げと達成率、注文履歴、またリコメンドすべきメニューが確認可能になりました。これらは過去の蓄積された売上データを活用しており、店舗のホスピタリティ向上につながりました。今後はリコメンド精度の向上や、来店記録との連携、リコメンド時のトークスクリプト用食材情報の提供など、期待が高まります。また、今後は店舗の温湿度、画像、音声といった環境情報も取得できないかと考えています。将来は、店舗のデジタルツインを実現するべく、いまからデータを取得し始めているとのことです。バーチャルな店舗からリアルな現場をコントロールする、同じ未来を見つめるメンバーを募集しています。(発表者:株式会社セカンドファクトリー 千葉隆一氏)

ウェアラブルグラスの活用による生産性向上への取組

ウェアラブル活用WGはこのシーズン3に新たに発足したWGです。今シーズンはウェアラブルグラスを中心デバイスとして、IoT活用を検討、実験しました。ウェアラブルグラスを3種そろえた体験会からWGはスタートし、意見交換を重ね、赤外線の可視化を通じたカメラやセンサー設置作業の効率化ソリューションと、「音声入力」「音声操作」「可視化(予知化)」を活用した生産性向上ソリューションの2つを、今シーズンのテーマとしました。屋外で赤外線センサーや防犯カメラを設置する際は映し出される画面をみながら調整する必要がありますが、壁面や高所に設置する場合その場で画面を確認するのは困難で、現在は設置者と画面確認者の複数人で作業しています。ウェアラブルグラスを利用することで一人での設置が可能になれば、かなりの省コストが期待できます。実際に炎天下で設置実験を行ったところ、ウェアラブルグラスのディスプレイの視認性は高く、また両手が空くことから利便性が高いことがわかりました。一方、屋外という過酷の環境でも動作する性能が求められることがわかり、ビジネス化のポイントとして共有しました。

後者は、ツバメックス社の協力を得て、金型の品質チェックの課題解決に、音声入力・音声操作とウェアラブルグラスを利用し取り組みました。ツバメックスでは、職人が金型づくりに集中できるよう、帳票入力などその他の作業はできるだけ省力化したいと考えていました。実験は技術者2名が装着して行いました。その結果、タイムラグや音声認識率など、ソリューション精度を上げる必要があるとの前置きはあるものの、未来の道具としていずれ自分たちが進むべき方向であるという前向きな評価をもらうことができました。シーズン4はこのソリューションについて、さらに昇華させ実ビジネス化を図る予定です。並行してほかのテーマも検討しており、AIとの連携、グラス以外のウェアラブルデバイスの活用など、他のWGとの連携で活用シーンを見出してゆきたいと締めくくりました。(発表者:株式会社Enhanlabo 座安剛史氏)

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