Start enebular for IoT 2019 開催レポート(後編)
2019年4月19日(金)に虎ノ門ヒルズフォーラムにて、enebularをテーマとしたウフル初の大規模イベント「Start enebular for IoT 2019」を開催。開催レポートの後編では、分科会であるBizトラックとTechトラックの様子をご紹介します。Start enebular for IoT開催レポート(前編)で紹介させていただきましたように、定員を大幅に超える来場者にご参加いただき、展示ブースを含め、会場は熱気に包まれました。
Bizトラック
IoTには協創が不可欠
株式会社ウフル IoT×enebularビジネス開発本部 副本部長 竹之下航洋
ウフルIoT×enebularビジネス開発本部 竹之下より、enebularを用いて「ファシリティマネジメント」や「アセットトラッキング」分野を中心とした様々なIoTビジネスを支援してきた経験を元に、IoTは複数の企業が協創して取り組まなければ成功が難しいこと、そして、企業間でのテーマ設定やミッションプロファイリングの整理、利益設計などを当初から策定することが不可欠であることを解説しました。また、これまでの経験から、とにかくありもの製品を組み合わせてやり始め、ビジネスがスケールしてきたらそれをスイッチする方法が有効であると紹介しました。
株式会社日立物流 営業開発本部 デジタルビジネス開発部 部長 中安良二 氏
続いて、ウフルと業務提携している日立物流の中安良二氏にご登壇いただきました。日立物流は現場力を生かし、物流業界の競争が激化する中、デジタル化・プラットフォーム化を通じて新しい領域に踏み出して行こうとしています。2018年4月より、事業・業界を超えた協創領域の拡大を図り、日立物流は新たなイノベーションを実現しようとするビジネスコンセプト「LOGISTEED」を掲げています。
中安氏は「物流に加え、金流・情流・商流というところを巻き込んで、トータルでのソリューションパッケージ化・プラットフォーム化というところに進めていきたい」とした上で、「スマートロジスティクスからさらに領域を超えて、従来のパートナーに加え、AI・ロボティクス、IoT、フィンテック、シェアリングといった、色々なパートナーと連携して事業領域を拡大していきたい」と意気込みを語りました。
株式会社ウフル IoTイノベーションセンター ゼネラルマネージャー 米田隆幸
一緒に登壇したウフル IoTイノベーションセンター 米田は、「将来enebularを活用することで、物流現場力の可視化と、さらなるインテグレートを実現できる」と提案し、今後2社間のみならず、会場の様々な企業との協創で、IoTの世界を盛り上げていきたいと結びました。
プラットフォームを活用し、IoTの困難を乗り越える
アーム株式会社 IoTサービスグループ セールス&事業開発 ディレクター 春田篤志 氏
Bizトラックの締めくくりとして、世界的な半導体IP企業であり近年はクラウド型IoTプラットフォームも提供するアームの春田氏にご登壇いただきました。冒頭、IoTで新規事業を作るポイントとして、「いかに顧客価値を創造していくかが非常に重要です。そこではデータ活用が不可欠。ただ、これまではIoTのデバイスによって生成されるデバイスデータと、顧客や消費者に関連するマーケティングデータや業務に関連するデータが、個別の活用にとどまっていました。両者を掛け合わせて新たなインサイトを獲得していくことが、今後の競争力であり、勝負です」と語ります。
しかし、IoTの開発から実地配備、運用に至るまで様々な課題がまだ残されており、それらに対してアームが提供するIoTプラットフォームがソリューションになると紹介。セキュリティ面にも力を入れており、「セキュアなIoTシステムを構築するための指針や参照実装をPlatform Security Architecture(PSA)と呼ぶフレームワークにまとめ、業界標準にすべく提唱しています。参照設計はオープンソースで提供し、アーキテクチャの文書も一般公開中。第三者機関による認証制度もスタートしました」と取り組みを紹介しました。
Techトラック
分散協調した最適な処理の実現へ
名古屋大学 大学院工学研究科 准教授 米澤拓郎 氏
Techトラックでは、まず名古屋大学の米澤氏から、enebularでも採用しているNode-REDの可能性や、IoTが広がる5年後、10年後を見据えた研究内容について、スマートシティ分野を中心にご説明いただきました。スマートシティは2000年代に一度盛り上がったもののシーズを押し付け気味であったことから普及せず、現在はスマートシティ2.0ということで、市民にとって本当に嬉しいサービス、仕組みはどういったものかという視点で研究がなされています。
こうした分野は、色々な技術・データを組み合わせて街の運営やサービスを開発していく必要が生じてくるため、複雑な処理フローをどのようにマネジメントするかが重要になると予測されます。そこで、「クラウドやFog-Edge環境を対象としたサービスのデプロイメントやサービスのマネジメント、またはその間でのオーケストレーションが、5年、10年以内に非常に重要な課題になると思っています。この実社会へのIoTの応用は避けて通れない課題として認識されるでしょう。こうした時に、エッジコンピューティングのような概念や、Node-REDのようなテクノロジーが、ディストラクティブなテクノロジーとして認識されるようになると予想されます。enebularも含めた可能性が非常に多く存在しているのではないかと考えています」と展望を述べました。
ハードウェアとクラウドが融合する社会へ
株式会社ウフル enebular開発部 部長 宇佐美雅紀
続いて、ウフル enebular開発部 宇佐美より、enebularのサービスは、1. IoTシステムを開発する、2. IoTシステムを運用する、3. 開発者コミュニティ、という3つの機能を持つことを説明しました。また、enebularの特徴をNode-REDを使ってプログラミングをし、それをクラウド、ゲートウェイ、エッジデバイスにリモートデプロイして、非常に簡単にIoTシステムを実現できる点だと強調。開発・運用面のいずれも機能を改善していく中で、短期的にはニーズの高いAIアセットのデプロイメントとデバイスをグルーピングして管理する機能を開発していると述べました。
オムロン株式会社 イノベーション推進本部 CTO室 プロトタイプアーキテクトグループ長 髙塚皓正 氏
最後にセンサー技術に強みを持つオムロンの髙塚氏より、センサーというハードウェア側の立ち位置から、ご講演いただきました。「IT、IoT、AIといった技術革新が起きており、ニーズの多様化やリーン開発がなされる中、センサーの利用が容易であるとか、システムとの連携が容易であるという新しいニーズが出てきています」と話し、繋がりやすい、オープンプラットフォーム対応のセンサーが必要とされるようになった背景を説明。そこで、ラズベリーパイなどのオープンプラットフォームへの繋がりやすさや、GitHubへのサンプルコードの掲載、メディアを通じたセンサーの使い方に関する情報発信、コミュニティを開いてのユーザーとの対話といった、ハードウェアメーカーに従来は求められてこなかった取り組みを、時代の変化に伴いオムロンが取り組んでいることを紹介しました。
大勢の方にご来場いただき、誠にありがとうございました。
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