四條畷市スマートシティ推進フォーラムレポート
スマートシティにおいて重要なことは、単に最先端のテクノロジーを使うことではなく、本質的な課題を見極め、地域住民の暮らしを豊かにすることです。市民を中心としたスマートシティ施策に力を入れる四條畷市でフォーラムが開催され、ウフルは開催へむけての支援と講演を行いました。
スマートシティの主役は「地域住民」
大阪府に位置し、奈良県にも接する四條畷市は、2017年に全国最年少で市長となった東修平市長が率いる全国的に注目を集める自治体です。東市長は、「市民中心のまちづくり」を掲げ、新しい施策にも積極的に取り組んでいます。
こうした中、四條畷市では、令和元年度をスマートシティ元年と位置づけ、AI・IoTなどの先進技術を活用し、地域課題の解消に着手。すでに、国土交通省が推進するスマートシティモデル事業にも参画しています。東市長の「スマートシティへの取り組みには地域住民の協力が不可欠」という考えから、地域住民にスマートシティを紹介するために四條畷市スマートシティ推進フォーラムが開催されました。
ほぼ満席の会場が熱気に包まる中、四條畷市の東市長より「スマートシティの真の目的は、単に機械やAIやIoTを使うことではなく、これから何十年先に住みよいまち、利便性の高いまち・生活を実現することです。そのためにも、まずは皆さんの声を聞く機会としてこのフォーラムを開催しました。」と住民の意見を形にしていくことを力強く宣言されました。
スマートシティって、どんなまち?
開会宣言に続き、四條畷市のスマートシティ推進パートナーである「日本一前向き!」コンソーシアム(設立準備中)の民間事業者代表として、ウフルの池澤よりスマートシティの全体像について解説しました。
政府が掲げるスマートシティの定義をより分かりやすく解説し、これまで限られた範囲で利活用されてきたデータを、ほかの業界や企業と共有することで、利用者が快適、便利になる新たなサービスが可能になることと、四條畷市における具体的なサービスイメージを示しました。そして、そのためには「産官学」に加えて「民」、つまり住民の方々の協力が非常に重要であり、四條畷市では市民の約2/3の方々が、まちづくりに積極的に協力するモチベーションがあることを説明しました。
スマートシティは未来の話ではない
続いて、スマートシティの技術・サービスに精通した4名から実用化が近い技術や、スマートシティのためのサービスとは言われていないもののすでに始まっているサービスについてのご紹介がありました。
1.スマートシティの実現に向けた実証実験に基づく最新研究
奈良先端科学技術大学院大学 松田助教
ドライブレコーダーの動画から桜の開花状況を自動判別して、マップ上にプロットしていく技術や、観光地の経路を動画で案内する際に、あまり変化のない部分の動画を早回しで時間短縮するなど、動画から様々な情報を取り出し活用する技術が紹介されました。ほかにも、発災時などインターネットをはじめとするネットワークが利用できない場合にも、スマホ自身の通信機能で避難所内での情報共有を可能にする技術なども紹介されました。今はまだ一般的ではない技術をベースにして、スマートシティのイメージをより鮮明に示しました。
2.スマートシティにおける地域通信事業者の役割
近鉄ケーブルネットワーク 後藤氏
四條畷市、特に田原地区でのテレビ、電話、インターネットサービスを手がけている同社は、今後無線通信の分野にも注力していくことを説明し、スマートシティにおいて活用可能なLTE方式の地域BWA(Broadband Wireless Access)からローカル5G整備への展開にも意欲を示しました。また、地域に直接サービスを届けている事業者として、スマートシティにおいても、お客様の一番近くでサービスを提供することができる強みを活かしたいと述べました。
3.スマートシティの住民になりませんか?
NECソリューションイノベータ 重松氏
これまでの登壇者がスマートシティについて話してきた内容も踏まえ、「持続可能なまち」の重要性を強調しました。巨額を投じて素晴らしい仕組みを作っても、維持継続できなければ意味がなく、サービス提供者も利用者も持続可能なものとする必要性について述べました。また、カメラ映像に代表されるような個人情報に対するセキュリティについても「個人情報を守れる技術はあるし、事業者はその技術を高め続ける必要がある」と述べる一方、「誰にどこまで、どのような情報を提供するかは、利用者自身が判断しなければならない」と利用者側にも注意が必要であると語りました。
4. 四條畷市にぴったり!身近で楽しいスマートシティの基本大公開
関西電力 室氏
登壇者の最後として、全体を整理する意味で、前半は来場者も巻き込んだクイズ形式のプレゼンで会場全体を盛り上げてくれました。後半は、関西電力が四條畷市で提供している「OTTADE!」という小学生向けの見守りサービスや、スマートメーターから得られる情報で電気の使用状況がいろいろと確認できることなど、すでに一部のサービスによって、スマートシティ化されているということを紹介しました。
AI/IoTは「手段」
第2部のパネルディスカッションでは、総務省地域情報化アドバイザーでもある佐藤氏のモデレートにより、東市長やウフル米田も登壇し、パネルディスカッションが行われました。
「身近なスマートシティ技術」「未来に向けたスマートシティ技術」という2つのテーマで行われました。いずれも、技術はあくまでも手段であり、課題をベースに具体的なサービスを実現しなければならない点、技術を活用した課題解決を実現するためには、実際に課題を抱えている住民の方々の協力が不可欠であるという点が強調され、住民の方々とテクノロジーを活用して、ともにスマートシティを実現していこうという各登壇者の意気込みが語られました。
最後は、林副市長より、参画した企業、団体、また市民の方々に感謝を述べられ、市民が中心となり始めた地域活性化の活動は、行政としても持続可能なまちづくりの実現の検討で応えていくと語り、引き続きの協力を呼びかけました。
触れるテクノロジーが心を動かす
住民の方々にテクノロジーを身近に感じてもらうために併設した体験・展示コーナーでは、イシイ株式会社による「ドローンの操縦体験」で、人気のあまり準備したバッテリーが途中で足りなくなり、また、NECソリューションイノベータによる「NEC 歩行姿勢測定システム」は、3Dセンサに向かって歩くだけで「歩く姿勢」を測定、可視化し、歩行年齢を計測できるとあって、中高年の方が行列を作るほどの人気ぶりでした。
近隣に位置する奈良先端科学技術大学院大学からは、行きたい観光地を指定するとその経路を動画で案内してくれる「観光動画付きガイダンスシステム」が展示され、関西電力株式会社は、電気自動車を路面からの電波で充電する無線充電システムの模型を展示するなど、スマートシティでの活用が期待される様々な技術を体験することができました。
スマートシティの実現に向けて
スマートシティづくりにおけては、最先端のテクノロジーを投入すればスマートシティが実現するといった簡単な話ではなく、地域課題を見極め、地域住民にとって価値のあるサービスを提供することが重要です。さらにその現実には、新規事業開発やスマートシティ、エコシステム形成など専門的な知見を持つ人材が欠かせません。
今回のフォーラムは地域住民と一体となったスマートシティ実現の第一歩です。地域住民に方々に使っていただけるサービスを生み出していくために、ウフルもコンソーシアム参画企業として、四條畷市のスマートシティ実現に向けた取り組みをともに推進していきます。
ウフルは四條畷市に加えて、これまでに長野県伊那市、和歌山県白浜町、広島県、新潟県、釧路市など全国20を超える地方自治体を支援してきました。IoTでの新規事業開発やエコシステム形成といった知見と、様々な企業のサービスや製品をつなぐ技術を活かし、引き続き全国各地のスマートシティづくりやIoTの推進に貢献していきたいと考えています。
※ 掲載写真の一部は、奈良先端科学技術大学院大学、四條畷市田原支所にご提供いただきました。
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